避難所に行けない障がい者と家族、求める場所は「家族が一緒に過ごせる場所」
睡眠障害を抱えながら、“1.5次避難所”へ移動
石川県輪島市では、障害者や高齢者、妊産婦などを受け入れられるよう、26の施設と協定を結んでいるが、現時点で開設できている「福祉避難所」は7か所のみ。市の担当者は、「事業所も断水などの被害を受けており、受け入れられる状態にない」と話す。
「海と空」と「一互一笑」にも避難所から通っている職員がおり、職員の人数が足りていない状況が続いていた。そんななか、障がいのある人とその家族だけがまとまって生活することができるように“1.5次避難所”の確保に奔走する女性がいた。「社会福祉法人 弘和会」事業部長・藤沢美春さんだ。“1.5次避難所”とは、生活環境の整った2次避難所へ移るまで、一時的に被災者を受け入れる避難所のこと。
震災から14日目を迎えた、1月14日。藤沢さんが確保した“1.5次避難所”に、香さんと佑輝くんも向かうことになった。環境の変化に戸惑い、睡眠障害となってしまった佑輝くん。香さん曰く「(昨日も)深夜0時ぐらいから多分5時ぐらいまで、ちょっとウロウロしていた」という。そんな佑輝くんの様子から個室を準備しようとしていた藤沢さんだったが、1.5次避難所では相部屋にせざる得ないことに。「なるべく迷惑かけない状態で利用したいなとは思っている」と心配そうに話す香さんに、「大丈夫、大丈夫!それはちょっと(相部屋の)お母さんに私の方から連絡しとく」と力強く声をかける藤沢さん。 雪が舞う輪島市の1月。香さんと佑輝くんを含む数人が、福祉避難所から1.5次避難所へと移動していった。
約90㎞先の避難所へ「家族で一緒に過ごしたい」
輪島市から1.5次避難所「国立能登青少年交流の家」のある羽咋市までは約70㎞。無事到着した香さんと佑輝くんは、2週間ぶりのお風呂に入って気分転換へ。夜も声を出して歩き回る佑輝くん。相部屋の人に迷惑をかけてしまわないかと香さんは祈るばかりだ。
翌朝、被災者家族らの食事は食堂でバイキング。しかし、食堂に佑輝くんの姿はなかった。佑輝くんの部屋を訪れると、パンと野菜ジュースで朝食をとる佑輝くんの姿が。「食堂の前でダメでした。食堂の前でUターンして、いつもの拒否が始まったので。無理やりではなくても大丈夫かなと思って」と部屋で過ごしていた理由を話す香さん。自宅から車中泊、そして福祉避難所から1.5次避難所への移動。佑輝くんにとっては、1.5次避難所はいまだ“落ち着く場所”とはほど遠い状況だった。