「ラグビー不毛の地」から夢のW杯へ ベールに包まれる日本初戦の相手・チリ
9月8日に開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会。1次リーグD組の日本代表が10日の初戦で対戦するチリ代表は、情報が少なくベールに包まれた存在だ。過去に一度もW杯に出たことがないラグビー不毛の地だったが、近年急成長を遂げて米大陸でW杯常連のカナダ、米国を破る番狂わせを起こした。世界ランキングは参加20チームの中で最も低い22位(8月28日付)。前評判は高くないが、勝負強さは侮れない。(共同通信=田丸英生) ▽劇的勝利でW杯の扉開く 昨年7月、W杯行きの切符を懸けた米大陸第2代表決定プレーオフは劇的な幕切れとなった。ホームでの第1戦を21―22で落として迎えた敵地での第2戦。前半途中で0―19とリードされ、2戦合計20点差を追う展開を強いられた。後半に盛り返して31―29と勝ち越したが、終了間際に痛恨の反則を取られる。決まれば再逆転のPGを相手が蹴る準備をし、万事休すかと思われた。
その時、大画面にリプレーが映し出されて事態が一変する。チリのフランカー、マルティン・シグレン主将が密集で相手選手から反則を受けていた様子が分かると、会場内もざわつき始めた。 当初は反則に気づかなかったというシグレンは、映像を見て必死に主審に訴えた。 「PGを蹴られないようにキッカーの前に立ち、(ビデオ判定の)TMOで確認するよう要求し続けた。最初は聞いてもらえなかったが、見れば明らかだったので判定が覆るという自信はあった。もし映像がなければどうなっていたか分からないので、目の前のスクリーンで流してもらえたのは幸運だった」。 リプレー検証の結果ペナルティーは取り消され、2戦合計52―51という大接戦をものにして新たな歴史を刻んだ。 ▽アマチュア脱却し、プロ化へ意識改革 W杯初出場という壮大な目標を掲げ、改革を本格的に推し進めたのがチリ・ラグビー協会のクリスティアン・ルドロフ会長だ。元国際審判という経歴を持つ会長は、前職でエンジニアとして2007年から16年まで上海に駐在。その時期に審判としても活動し、日本や香港で行われた7人制の国際大会で笛を吹いたこともある。