日常を彩ってきた電話ソング10選
1869年10月23日(旧暦では9月19日)に東京~横浜間において日本で初めて公衆電信線の架線工事が開始されたことから、1950年に電気通信省(後の電電公社、現・NTT)が10月23日を「電気通信記念日」に制定。1956年に「電信電話記念日」に改称され、その10月23日を中心に「電信電話週間」が設けられています。 文化や時代の変化とともに電信電話の形もさまざまなものに発展していますが、想いを伝えるには欠かせないアイテムということもあり、いまもなお多くの楽曲で歌われてきています。 そんな数多の電信電話ソングのなかから、代表的なものをいくつか紹介。「歌は世につれ世は歌につれ」とは言いますが、懐かしさや今も変わらない情景などを数々の歌から確かめてみるのも面白そうです。 まずは、60年代のポップス・スタンダードからポール・アンカの「キッシン・オン・ザ・フォン」(Kissin' On The Phone)。日本では「電話でキッス」の邦題で飯田久彦、ボニー・ジャックス、ゴールデン・ハーフなど多くのアーティストが日本語カヴァーしたことで人気曲となりました。 70年代には、1973年12月にフィンガー5が「恋のダイヤル6700」を発表。“ハローダーリン”から始まるリズミカルなこの楽曲は、4週連続でオリコンチャート1位を獲得。1974年の年間5位を記録し、次作の「学園天国」とともに大ヒット曲となりました。当然カヴァー曲も多く、モーニング娘。や「ようかい体操第一」など『妖怪ウォッチ』主題歌で一世を風靡したDream5などがカヴァーしています。 薬師丸ひろ子の5枚目のシングルとして1985年にリリースされたのが「あなたを・もっと・知りたくて」。「もしもし 私 誰だかわかる?」のセリフも印象的なこの楽曲は、週間2位、年間12位のヒットに。電電公社がNTTへ民営化した直後のキャンペーンソングとして起用され、薬師丸が出演したCMや当時の電話番号案内「104」の待ち受け音に同曲が使われたことも話題となりました。 令和のティーンエイジャーなどの若者にとっては「?」となりそうな“ポケベル”(ポケットベル)を題材とした楽曲が「ポケベルが鳴らなくて」。1993年に発表された国武万里の2枚目のシングルで、ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』のオープニング・テーマとなりました。チャートこそ最高7位でしたが、50万枚超のセールスとなり、国武は日本レコード大賞とゴールデン・アロー賞のそれぞれ新人賞を受賞しました。 1998年からは2曲をピックアップ。Kiroroの「長い間」は、すでに沖縄にてヒットしていたインディ盤を衣替えして、1998年1月にメジャー・デビュー・シングルとしてリリース。チャート初登場時は27位でしたが、有線放送やラジオ番組などでのリクエストも多く、ランクイン9週目にして1位を獲得。その後もロングセールスを続け、ミリオンセラーに。翌年の選抜高等学校野球大会の入場行進曲に選ばれると、同大会では沖縄県代表の沖縄尚学が初優勝を果たすなど、「長い間」が注目される1年となりました。 同年12月にリリースされたのが、世間を席巻した当時15歳の宇多田ヒカルのメジャー・デビュー・シングル「Automatic / time will tell」。“七回目のベルで受話器を取った…”のフレーズも印象的な「Automatic」は、黄色いソファの前で立ち上がるとカメラから見切れてしまうために中腰で歌ったミュージック・ビデオも話題となりました。当時はCDが8cm盤と12cm盤が混在する時期で、シングルの個別集計ではトップとなりませんでしたが、合算で1位に。1999年の年間合算チャートでは「だんご3兄弟」に続く2位の大ヒットとなりました。 ちなみに、前述の「あなたを・もっと・知りたくて」では“(ベルを)8つまで数えて切った”のフレーズがあり、電話のコールは7、8回が絶妙なラインなのかもしれません(笑)。 青山テルマは、ロングヒットしたSoulJaの「ここにいるよ feat.青山テルマ」へのアンサー・ソングとして、客演返しした「そばにいるね feat.SoulJa」(写真)を2008年にリリース。SoulJa版とは対照的に、女性視点での歌詞を青山がメインで歌っています。週間1位を獲得し、2008年年間7位のヒットとなりました。 2010年には木村カエラが15作目のシングルとして「Ring a Ding Dong」を発表。タイトルは鐘を鳴らす音を英語風に表わしたもので、子供の誕生を祝福する内容。親友の結婚式のために書き下ろした前作シングル「Butterfly」に引き続く、お祝いソングとなりました。歌詞に直接的に電話は登場しませんが、NTTドコモのキャンペーンCMソングとして話題に。木村にとって自身初の初登場1位シングルとなりました。 最後に世界的なヒットとなった2曲を紹介。2011年にはカナダ出身のカーリー・レイ・ジェプセンが「コール・ミー・メイビー」 (Call Me Maybe)をリリース。一目ぼれしたカレからの電話を心待ちにしている女子の胸躍る気持ちを綴ったポップ・チューンで、自身初のEP『キュリオシティ』からの最初のシングルでしたが、母国チャートで1位となると、全米チャートも席巻。9週にわたって1位となり、ヨーロッパやオーストラリアなど世界各地でヒットを記録しました。同曲はアルバム『キス』に収録され、全米6位を記録しました。 その翌年には、アメリカのマルーン5が「ペイフォン feat.ウィズ・カリファ」(Payphone feat.Wiz Khalifa)をリリース。アルバム『オーヴァーエクスポーズド』から先行シングルで、バンドにとって初となる全英シングル1位を獲得。カナダやイタリアでも1位に、アメリカやオーストラリアなどでは2位と、世界的なヒット曲となりました。 “ペイフォン”とは公衆電話のことで、“公衆電話から君の家に電話しようとしてるけど、小銭を使い切ってしまった”と歌いながら、ヨリを戻そうとする男の悲恋や元カノへのやっかみを綴っています。 そのほか数多くの電話ソングが存在しますが、古い曲から新しい曲を聴き比べて、懐かしさを思い起こしたり新たな発見しながら、時代の移り変わりについて話してみるのはいかがでしょうか。