年の差を超えた友情を描いた邦画の傑作は? 珠玉の名品(4)5本の指に入る…稀代の名優が絶賛した最高の物語
人が心を通わせ合うとき、歳の差は問題ではない。しかし、何かと数字にとらわれてしまうのが人間だ。だからこそ、常識を超えた瞬間に心がときめく。今回は、歳の差のある友人関係を描いた日本映画を5本セレクト。一般的なバディものと一味違った、年の離れた人間同士の交流が育む温かな物語をご紹介する。第4回。(文・シモ)
『春との旅』(2010)
監督:小林政広 脚本:小林政広 出演:仲代達矢、徳永えり、大滝秀治、菅井きん、小林薫、田中裕子、淡島千景、柄本明、美保純、戸田菜穂、香川照之 【作品内容】 主人公の忠男(仲代達矢)は、自分の妻に先立たれ、孫娘の春(徳永えり)と暮らす初老の男。かつてはニシン漁で生活が潤っていたが、いまではその面影もない寂れた海辺の町で自分の人生を嘆きながら暮らしている。 一方の春(徳永えり)は、母親(忠男の娘)を亡くし、町の小学校の給食係として生計を立てながら忠男と暮らしていたが、廃校となり失業する。ある日、2人は、町を飛び出す...。 【注目ポイント】 本作の脚本は、主演の仲代達矢に自身の約150本の出演作中で「5本の指に入る脚本」と言わしめたほど、完成度が高い。祖父と孫娘の春の2人が、北海道の増毛から東北・宮城を経て東京に至るロードムービーとなっている。 職を失った春は都会に出て自立しようと決意するが、そうなると当然、忠男は独りぼっちになる。映画が描くのは、忠男の身寄りを探すための旅である。 親戚を訪ねてまわり、「自分を置いてくれ」と懇願する忠男だが、うまくいかない。それぞれが家庭の事情を抱えており、忠男を養う余裕などないのだ。 主人公・忠男と春の関係が面白い。時には、喧嘩したり、一緒に泣いたり…。孫と娘だが、友達のような関係でもあるのだ。 2人は、以心伝心でつながっているところもある。粗暴だが実は優しくて人情味のある忠男を演じる仲代達矢の深みある演技は絶品の一言。対する徳永えりの演技も素晴らしい。 また、大滝秀治、淡島千景、菅井きん、小林薫、柄本明、香川照之など、豪華俳優陣との共演も見ものとなっている。 (文・シモ)
シモ