福井女子中学生殺人の再審開始へ、検察は異議申し立てせず 前川彰司さん無罪の公算
1986年に福井県福井市で起きた女子中学生殺人事件で有罪が確定、服役した同市の前川彰司さん(59)の第2次再審請求を巡り、名古屋高裁金沢支部(山田耕司裁判長)の再審開始決定に対し、検察側は10月28日、異議を申し立てないと表明した。再審公判が開始され、前川さんは無罪となる公算が大きい。 第2次再審請求では検察側が、県警が前川さんの知人らを取り調べた際に作成した捜査報告メモなど計287点の証拠を開示した。争点となった関係者供述の変遷について弁護側は「捜査に行き詰まった警察が誘導した」、検察側は「合理的な理由があり、信用性に影響しない」と主張していた。 高裁金沢支部は23日、新旧証拠を総合評価して再審開始を決定した。山田耕司裁判長は、確定判決が有罪の根拠とした「血を付けた前川さんを見た」との目撃供述について、自己の利益のためにうそを言った可能性があるとして信用性を否定。この供述に基づき「捜査機関が他の主要関係者に対し、誘導などの不当な働きかけを行い、うその供述が形成された疑いが払拭できない」とした。 検察が捜査報告書に誤りがあることを知りながら、公判で明らかにしなかったとし「裁判所に、動かしがたい事実について真実とは異なる心証を抱かせたまま、有罪判決をさせた」と指摘。「不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があり、検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為」と指弾した。 確定判決によると、福井市の市営団地で1986年3月19日夜、自宅で留守番中の女子生徒が包丁で殺害された。県警は87年、殺人容疑で前川さんを逮捕。福井地裁は90年に無罪判決を出したが、高裁金沢支部が95年に懲役7年の判決を出し確定した。2004年に再審請求し、高裁金沢支部は11年に再審開始を決定したが、13年に取り消された。前川さんは22年10月に第2次再審を請求した。
福井新聞社