ガムテープで巻いた即席ドレスも ラグジュアリーを再定義する「バレンシアガ」
有名な企業ロゴのパロディがいたるところに
招待状の仕掛けとリンクして、ランウェイにはeBayの刺しゅう入りのアイテムが登場。ヴィンテージ加工を施したオーバーサイズのクルーネックTシャツ(税込8万8000円)はショーの発表後、ブランドの公式サイトにおいて200点限定で発売された。ほかにも、第二次世界大戦前にイギリス政府が作成したことで知られるポスター「Keep Calm and Carry On(平静に、ふだんの生活を続けよ)」のスローガンをはじめ、ハリウッド映画をテーマとしたレストラン「Planet Hollywood(プラネット・ハリウッド)」のロゴなど、見慣れたデザインをサンプリング。「Coca-Cola(コカ・コーラ)」を「Ciao Bello(やぁ、美人さん)」に置き換えるなど、資本主義社会を次々とミーム化した。
時間を止めたかのようなフローズンドレス
ファーストルックは創業者クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)にオマージュをささげる、ヒップ・オーレット(腰に肩パッドを縫い付けた構造)のイヴニングドレス。いくつものドレスはクラシカルなシルエットを踏襲しつつも、ノーズピアスや破れたストッキングなどパンクなスタイリングが目立つ。服のシワを凍結させたような特殊加工のドレス(生地をぬらして動きを作ってから乾かし、手作業でコーティングしたもの)は、その固まったドレープがシュールなねじれを生み出していた。新しいものと古いものが交差し、奇妙なハーモニーを奏で始める。
逆さまにしたデニムパンツをトップスに
さらに首からトレンチコートをつり下げたようなドレスなど、アップサイクルのアイデアが遊び心たっぷりに取り入れられた。逆さにしたパンツで作られたトップスは、漁師の上着を引用したクリストバルの代表作「ラ・ヴァリューズ(LA VAREUSE)」からインスパイアされたアイテム。バックパックやジムバッグも解体してミニドレスとし提案されるなど、ポップかつ大胆な解釈が光る。
1分でガムテープを巻いて作ったドレス
特に観客を驚かせたのは、ガムテープで様々な服をつなぎ合わせたルック。これは60秒以内に手持ちの素材を使って新たなルックを作るという、デムナがスタジオでプレイするゲームから着想を得たものだという。例えば、3つのフーディを組み合わせて作ったドレスはメゾンの「バブルドレス」の再解釈となっており、逆さまになったフーディの袖がマーメードテールを作り出した。この即席ドレスは“レディメイド”の概念を揺るがしながら、服作りの根本に立ち返る実験でもある。さらにガムテープをそのまま腕に装着したような樹脂バングルも登場し、梱包というモチーフがEbayとのつながりを連想させた。