「乗り越えなきゃいけない壁」に直面している両雄が探す浮上のきっかけ。終盤にスコアが動いた流経大柏と青森山田の強豪対決は2-2の痛み分けに
[9.8 プレミアリーグEAST第13節 流通経済大柏高 2-2 青森山田高 流経大柏G] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 前に進んでいく者だけに、その先へと繋がる道を阻むような壁は現れる。ぶつかって、跳ね返されて。それを繰り返すことでしか、さらなる成長は望めない。シーズンもいよいよ後半戦。壁の向こう側に待っているものを信じて、またぶつかって、乗り越えていく。 「今は凄く良い壁にぶつかっていますね。選手権までの試練じゃないですけど、それぞれがそれぞれのところでハマっているような、絶対乗り越えなきゃいけない壁がみんなに来ているので、チームとしても壁にぶつかっている感じですけど、ここを乗り越えようとするスタンスは大事だよねという話はしています」(流通経済大柏高・榎本雅大監督) 終盤にスコアが動いた高体連の強豪対決はドロー決着。8日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第13節で、流通経済大柏高(千葉)と青森山田高(青森)が対峙した一戦は、1-1で迎えた後半39分にDF福井史弥(2年)のゴールで青森山田が勝ち越したものの、流経大柏もアディショナルタイムにMF柚木創(3年)が執念の同点PKをねじ込み、双方に勝点1が振り分けられた。 前節は尚志高に0-3で敗れ、リーグ戦3連敗となった流経大柏は、「今調子の良い選手の配置も含めて、ちょっとチャレンジしてみようかなと。まだまだ未知数なところもありますけど、そういうことでも起こしていかない限りは変化というのも起きてこないですから」と榎本雅大監督も話したように、右からDF柳澤寿哉(3年)、DF奈須琉世(3年)、DF富樫龍暉(3年)を並べた3バックを採用。中盤より前には攻撃的な選手を多く配した、新たなオプションにトライする。 立ち上がりはお互いにチャンスを作り切れない流れの中で、飲水タイムを過ぎるとホームチームが踏み込んだアクセル。27分にはMF亀田歩夢(3年)のクロスから、30分には柚木のパスから、ともにMF和田哲平(3年)が打ち込んだシュートは、それぞれ青森山田のDF小沼蒼珠(3年)とDF伊藤柊(3年)がきっちりブロック。さらに33分にもFW粕谷悠(3年)とのワンツーで左サイドを抜け出した亀田のフィニッシュは、青森山田のGK松田駿(2年)のセーブに阻まれたものの、ホームチームがゴールへの意欲を打ち出していく。 だが、ワンチャンスを生かしたのはアウェイチーム。39分。MF谷川勇獅(3年)が中盤でルーズボールを回収し、MF別府育真(3年)は左へ展開。走ったFW大沢悠真(3年)が正確なクロスを届けると、走り込んだMF浅野瑠唯(3年)のシュートは鮮やかにゴールネットを揺らす。1-0。まさに『1本中の1本』を決め切った青森山田が1点をリードして、最初の45分間は終了した。 後半は一転して、青森山田が鋭く立ち上がる。1分。大沢のパスから左サイドを駆け上がった小沼がクロス。FW石川大也(3年)のシュートはヒットしなかったものの、いきなり漂う追加点の香り。14分にも石川のポストプレーから、MF川口遼己(3年)のシュートはDFをかすめて枠の左へ逸れるも、前へのパワーと推進力が増したことで、ゲームリズムをジワジワと引き寄せていく。 負けられない流経大柏は23分に決定機。DF堀川由幹(3年)を起点に、柚木のシュートは松田のファインセーブに阻まれるも、この流れで得たCKのチャンス。柚木が蹴ったキックはいったん跳ね返されたが、収めた堀川は「相手の頭を越える長いボールを蹴れば、うまく折り返せるかなと思って」ファーサイドへ正確なクロス。柳澤が競り勝ったボールを、途中出場の長身FW大藤颯太(2年)が泥臭くゴールへ流し込む。1-1。会場のボルテージが一段階引き上げられる。 流経大柏は攻める。31分。右サイドを柚木が切り裂き、上がったクロスを亀田が合わせたヘディングは松田がキャッチ。36分。今度は左サイドで堀川が果敢に仕掛け、送り込んだマイナスの折り返しを亀田が枠へ収めるも、松田が丁寧にキャッチ。37分にはビッグチャンス。亀田の丁寧なラストパスから、柚木が右足を振り切ったシュートは左ポストに跳ね返ると、反応した大藤は頭で合わせるも、バウンドしたボールは枠の上へ。「前線のせいだけではないですけど、最近は決め切るところで決め切れないところが多くて……」と富樫。2度目の歓喜はなかなか訪れない。 40分。炸裂したのは必殺のセットプレーだ。センターライン付近で獲得した青森山田のFK。谷川が蹴り込んだキックを右サイドから石川が折り返し、1分前に投入されたばかりのFW比嘉大陽(3年)は懸命にフリック。詰めた福井のシュートがゴールネットへ吸い込まれる。2-1。3試合ぶりの白星を目指すアウェイチームが、再び一歩前に出る。 「ああいう隙を見せていることが、やはり今年の勝ち切れないところかなと」(青森山田高・正木昌宣監督)。試合はまだ終わっていなかった。45+3分。流経大柏は亀田のパスから左サイドを運んだMF稲田斗毅(3年)がクロスを中央へ。ファーに入った和田が打ち切ったシュートは、相手DFのハンドを誘発。ホイッスルを吹いた主審はペナルティスポットを指し示す。 PKのキッカーは10番の柚木。向かって右に蹴り込んだボールは、松田も触ってはいたものの、ゴールネットへ到達する。「最後のところで自分たちの集中力の甘さが出たというか、まだ足りなかったのかなと」(谷川)「思うように試合は進まなかったですけど、最後に追い付けたのは次に繋がるかなと思います」(堀川)。ファイナルスコアは2-2。双方に収穫と課題が浮かび上がった90分間は、どちらも勝点1がその成果となった。 4勝4分け5敗の9位。青森山田はもどかしい時間が続いている。この日は1点をリードしていた終盤に5バックへ移行し、ゲームクローズに取り掛かったものの、「5バックにした中で全体として引いてしまって、最後のハンドのシーンもディフェンスラインや中盤のラインがペナに入ってしまって引き過ぎたことで、遅れて出ていった距離も遠くて手に当たったというところなのかなと思います」と谷川。不運な面はあったとはいえ、勝点2を取り逃がした感は否めない。 「90分のうちの88分はできても、1分や2分でやられるのがこのリーグなので、それは日常から詰めていくしかないですね。選手たちは頑張っているけど、やっぱり90分しっかりとやり切れる集中力を継続する力、これをもっともっと詰めていきながら、ゼロで行き切って勝てれば流れは変わると思うので、勝点1を獲れたことをポジティブに捉えて、また次の試合はゼロにこだわってやりたいと思います」と正木監督。首位争いを演じている横浜FCユースを、今季まだ1勝と結果の出ていないホームに迎える次節で浮上のきっかけを掴むべく、再び日常を突き詰めていく。 6勝4分け3敗の3位。流経大柏も煮え切らない時間を過ごしている。リーグ戦無敗で臨んだインターハイ予選の決勝で市立船橋高に敗れてから、これで公式戦は5試合未勝利。「『“黒マル”が急に“白マル”にはならないのかな』って思っているんですけど、でも、『どこかの1勝でまた自信は取り戻せるよ』と選手には言っていたので、本当にがむしゃらになって、泥んこになってやるだけでしょという感じですね」(榎本監督)。今はブレイクスルーのきっかけになる白星を追い求めている状況だ。 個々の選手のポテンシャルも、多彩な攻撃のバリエーションを誇るチームとしての完成度も、間違いなくプレミア有数のクオリティ。「メンバーを見てもトップレベルの選手が集まっている中で、今はちょっと噛み合っていない部分もいくつかありますけど、選手権までに仕上げれば、日本一を獲れる力は全然あると思います」という富樫の言葉は選手たちの共通認識。チームとして、個人として、目の前の壁を乗り越えるべく、再び日常を突き詰めていく。 (取材・文 土屋雅史)
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