訪日客殺到する伝統の祭り、支えるのは外国人移住者 トラブルを心配する声あるけれど、運営の欠かせない力に
長野県の「野沢温泉の道祖神祭り」
温泉街の風情が残り、開業100周年を迎えたスキー場を誇る県北部の観光立村、野沢温泉村。近年、世界の「NOZAWA(ノザワ)」として国際的な知名度が高まり、増える訪日客や海外からの移住者が、江戸時代から続く村に刺激を与えている。 【写真】火付け役VS厄年 熱い戦いが繰り広げられる野沢温泉村の「道祖神祭り」
運営に協力する移住者、英語でルールを説明
冷たい雪が吹き付け、たいまつを手にした男たちの威勢のよい声が響く中、米国出身のデイブ・パドックさん(53)は、目の前を埋め尽くす訪日客の対応に追われていた。1月15日、勇壮な火祭りで知られる伝統行事「野沢温泉の道祖神祭り」を一目見ようとする観光客が入場整理を行うゲート前に殺到した。 「入場券はありますか」「酒の缶は持ち込めません」。パドックさんを含む約10人の外国人は英語でルールの説明を続けた。祭りには計約5500人が訪れ、うちオーストラリアを中心とした外国人は3600人余に上った。 パドックさんは、村の一大行事を手伝うのは「大変だけれど、いろんな人と話すことができて楽しい」と汗を拭った。28年前に来日し、数年前に新潟県津南町から村内に移住した。理由を、スキー場に魅せられ、「村の雰囲気の良いコミュニティーやオープンな村の人たちが好き」と話した。
「皆さんの力を貸して」協力お願いして3年目
2日前の13日。祭りを取り仕切る地縁団体法人「野沢組」の惣代(そうだい)を務める宮沢裕さん(68)は、事務所に招いた外国人移住者ら7人に「皆さんのお力を借りて無事にお祭りができるよう、ご協力をお願いしたい」と頼んだ。ゲートを設けて、外国人移住者に協力を依頼するのは3年目。 以前の祭りは誰でも入場できたが、ここ3年は新型コロナ対策や雑踏事故防止のため、22年は村民のみ、昨年と今年は村民と村内宿泊者に制限した。それでも昨年は計約4800人が訪れ、訪日客が半数以上を占めた。宮沢さんは「外国人移住者は祭りの運営に欠かせない力になっている」と実感する。
自治組織に「外国人委員会」
野沢組の組員は計約630戸と減少傾向だが、そのうち約20戸を占める外国人移住者の存在感が増している。野沢組は約5年前、内部に「外国人委員会」をつくり、住民に外国人との関わり方について聞き取りを行った。豪雪地の村で雪かき時のトラブルを心配する声が目立ち、道路に雪を捨てないなどのルールを書いた英語チラシを作成。年3回ほど外国人と意見交換会も開くようになった。 宮沢さんは「地元住民の生活も、この地域を良いと思って来てくれる外国人のありがたさも、どちらも大事」と捉える。村を気に入って移住した外国人だからこそ、一緒に今ある村の文化を守ってほしいと訴える。