広さでつかんだ後手番勝利 渡辺九段が4度目の優勝 第45回将棋日本シリーズ JTプロ公式戦
第45回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は、渡辺明九段と広瀬章人九段で争われる決勝戦が11月24日(日)に東京都江東区の「東京ビッグサイト」で行われました。対局の結果、雁木対右玉の力戦形で中盤戦の競り合いに強みを発揮した渡辺九段が106手で勝利。第40回大会以来となる自身4度目の優勝を果たしました。 ■力戦志向の雁木 渡辺九段は稲葉陽八段に、広瀬九段は藤井聡太JT杯覇者にそれぞれ勝っての決勝進出。振り駒で後手となった渡辺九段は雁木に組んで持久戦志向、対して広瀬九段はカニ囲いに組んであわよくば急戦を目指します。角交換が行われた直後の局面は一つの分岐点で、封じ手の局面で広瀬九段としては強く歩を打って銀交換を目指す手も有力でした。 なんとか局面の鎮静化に成功した後手の渡辺九段は右玉に組み替えたのちジワジワと力を発揮します。右辺で手にした小駒を使って7筋に手を付けたのが急所の反撃。自玉から遠い右辺一帯を軽く受け流して玉頭での反撃を狙うのは絶品の指し回しで、これにはさすがの広瀬九段も付け入るスキがありませんでした。 ■玉の広さ生かし快勝 渡辺九段に好手が続きます。守りの要に思われた左金をグイっと上がったのが模様の良さを明確にした好手。自陣への飛車の成り込みを許すのは大胆なようでも、代償として先手の角を捕まえてしまうのが早いと見ています。1手30秒の秒読みのなか、優位に立った渡辺九段の指し手が乱れることは最後までありませんでした。 最後は広瀬九段が自玉の詰みを認めて熱戦に幕。最終盤には先手に粘りの順が生じていたものの、玉の広さを生かしてうまく戦った渡辺九段の快勝譜となりました。渡辺九段はこれで5年ぶり4度目となるJT杯優勝。局後「目に見える結果が久しぶりに出たのはうれしい」と喜びを語りました。 水留啓(将棋情報局)
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