10年で人気ブランドに。躍進を続ける「テンマクデザイン」ヒット商品開発の裏側
2018年前後からはじまった第二次キャンプブームは、これまでのキャンプのイメージを大きく変えるものでした。 【民具の燗銅壺をアレンジしたアイテムを見る】 それまでは、大型連休や夏休みのファミリーレジャーという印象が強いキャンプでしたが、ひとりやふたりで楽しむソロ・デュオキャンプや、友人たちと過ごすグループキャンプ、女性が思い思いの時間を過ごす女子キャンプなど、ここ数年でこれまでのキャンプ像が一新。新たなキャンプスタイルが定着してきました。 この新しいキャンプ文化を支えてきた要素のひとつがキャンプギア。新しいスタイルの出現に合わせて、大小様々なアウトドアブランドから、それまでのキャンプの型を破るような数々のキャンプギア(キャンプ道具)が生み出されて来ました。第二次ブームでの盛り上がりは、ギアの進化無しには語れないでしょう。 そんなキャンプギアブランドのひとつが「tent-Mark DESIGNS(テンマクデザイン)」。アウトドア専門店「ワイルドワン」発のPBで、ユニークで勘所を押さえた商品展開でキャンパー(キャンプ愛好家)を魅了するブランドです。 ブランドのスタートは2011年と、アウトドアブランドの歴史としては浅いのですが、ワンポールテント「Circus」シリーズや女性キャンパーに人気のテント「PANDA」など、数多くのヒット商品を世に生み出しています。 ではそれらヒット商品は、どのようにして世に生み出されるのか。開発のキーマンである、株式会社カンセキ ワイルドワン事業部の根本さんにお話を聞きました。
素材はほぼすべて特注品
「企画から販売までは、アイテムによりますが、早くて半年、長くて4年ほどかかることもあります」 根本さんは、これまでバイヤーや店舗運営を始め、マーケティング、EC事業など、ワイルドワン事業部のほぼすべての業務を経験。現在では製品開発を一手に担っています。 テンマクデザインの商品には、比較的購入しやすい価格設定のものも多い印象ですが、商品企画から製品化までの道のりは決して安易なものではありません。 「まず私の方でラフ画を作成し、協力会社に送ります。協力会社は私のラフをもとにCADデータを作成し、詳細な仕様を決定していきます。メジャー片手に顔を突き合わせて、ここは何cm、ここはこういう風に織り込んで縫製して…など、とにかく細かいところまで決めていくんです。そこから詳細をまとめた指示書を工場に送って、サンプル品を作ります」 根本さんのデスクの中には常に方眼紙が準備されており、閃いたアイディアをいつでも書き起こせるようにしているそうです。 当たり前ですが、基本的にはすべての商品はフルオーダーメイド。ファスナーやバックルなどの汎用パーツ以外の部分については、全て細かく指定する必要があります。 「テントであれば生地はすべて特注になりますので、生地を“織る”ところからスタートです。素材や織り方、織り密度、色など、決めなければいけない項目はたくさんありますね。他にも防水や撥水のコーティングといった要素も指定していきます。もし、既存の生機(きばた/染色や仕上げ加工をする前の布生地のこと)を使用する場合でも、染色が必要になるため、使用する生地ひとつとってもすべて特注品ということになります」 それ以外にも、取り付けるパーツの選定、パーツひとつひとつの長さや縫い方、縫い位置など、決めることは山ほどあります。 「サンプル品が届いたら、フィールドテストを行い、使用感の確認をしていきます。ここまでで大体半年程度かかりますね。狙い通りの仕上がりになっていれば、そのまま工場に生産を依頼します。修正無しでスムーズに生産が進めば、企画から10ヶ月程度で発売となります。もし、テストで改善点があるようであれば、修正を行い、再びサンプル品を作成、フィールドテスト…といった形です」 特にフィールドテストには力を入れており、商品によっては実際に登山やカヤックなどのアクティビティにも持ち出して使用感を確認することもあります。 企画から商品化までにはかなりの工数と時間がかかることに加えて、工場の生産状況や社会情勢などの影響を受けたり、コラボ商品であればコラボレーターの納得いく仕上がりになるまで調整を続けたりと、開発には様々な要因が絡んできます。 このように、既存品の廉価版といった印象のあるPBとは異なり、しっかりとした商品開発フローを取っているテンマクデザイン。リーズナブルであるための妥協は一切なく、そして開発背景は一般的なアウトドアブランドと同等。だからこそ、思わず唸らせられる使用感の良さや細部に至る高いクオリティを保持した商品の提供を実現しています。