プロ表明した吉田輝星の1位指名は何球団?そして成功の可能性は?
評論家の里崎智也が語る成功の可能性
元千葉ロッテで野球評論家の里崎智也氏は、「そもそも高卒ルーキーの投手で新人王を獲得した人がどれくらいいますか? それだけ難しいことなんです」と、1年目から成功を収めることが、いかに難しいかを力説した。 過去に高卒投手での新人王は14人。しかも、近年は、1990年代には平井正史(オリックス、1995年)、松坂大輔(西武、1999年)の2人。2000年代には正田樹(日ハム、2002年)、田中将大(楽天、2007年)の2人しかいない。 「新人は未知数なんです。確かに吉田選手が甲子園で見せた、あのストレートは魅力です。可能性で言えば、2桁を勝つ可能性はあるでしょう。ただ、あのボールをプロのマウンドで投げられるのかどうか。高校生は、甲子園に合わせて調整してきますし“これで高校生活も最後”という集中力が出ます。プロ入りした途端に“なんで?”というほど球速が落ちてしまう選手も少なくありません。また吉田選手のストレートが、いくら素晴らしくとも、それだけで勝てるほどプロの世界は甘くありません。プロで成功するためには、少なくとも、もうひとつバッターが嫌だなあと感じる変化球を最低ひとつは会得する必要があります。甲子園のピッチングを見る限り、まだそういう変化球はありません」 確かに松坂大輔には、横浜高校時代からプロレベルのキレと制球力のあるスライダーがあった。マー君もストレートだけでなくスライダーにフォークがコントロールできていた。 吉田も、国体で最速152キロをマークしたストレートだけでなく、カーブ、スライダー、カットボール、2種類のツーシーム、チェンジアップ、スプリットなどの多彩な変化球を持つ。だが、プロでのウイニングショットとしては未知数だ。 プロでローテーションに入って2桁勝利をするためには、さらに克服すべき条件がある。 里崎氏が続ける。 「シーズンを通じて同じパフォーマンスを出し続けることのできる体力があるかどうかも条件になってきますね。それと勝ち星は入団するチームがどこになるのかも大きく関係してきます。広島や西武のような強力な打線の援護があるのならば、例え防御率が悪くとも勝ち星を伸ばすことができるでしょう」 1位で競合の末、どの球団にクジを引かれるのかも成功の重要なポイントだろう。 前述の片岡氏も、「余裕のあるチームに入った方がいいね。でも、プロでは変化球のコントロールがまだ不安。松坂レベルにいくか、いかないか、の段階だというのは、そういうこと。1年目は早くて6月。夏以降に出てくればいいんじゃないか。2年目、3年目でローテーに入り10勝するというイメージでいい」という見方をしている。 この日、吉田は、こういうプロ心得を口にした。 「厳しい世界。覚悟していかなきゃいけない。もう1回気を引き締めて、練習し直したいなっていう思いが強いです。自分の自信のあるところはストレートなので、しっかりとそこは磨いていきたいと思います」 甘い考えなどない。 人生の転機となる運命のドラフトは今月25日だ。