県都の名水(10月7日)
自然災害が絶えない。非常用の備品を取りそろえた家庭も少なくないだろう。欠かせないのは飲料水。人の命を育み、守る源だ▼蛇口から湧き出るその味は、おいしいに越したことはない。福島市水道局は水道水をペットボトルに詰め、「ふくしまの水」として売り出して久しい。超軟水。お茶をたてたり、だしを取ったりするのに向いている。水源は市北部の摺上川ダム周辺。水源保護地域に指定され、付近に汚染源は存在しない。国際品質評価コンテストで、10年連続金賞を受けた県都の宝だ▼市の上水道は来年、開設100周年の節目を迎える。旧泉村の湧水を引いたのが始まりとされる。良質の地下水に恵まれず、人々はかつて小川の水を飲んでいたという。供給当初は人口の増加で水が足りず、節水と設備拡張の「いたちごっこ」が続いた。平成に入り、主な水源は阿武隈川から摺上川ダムに移ったものの、建設が遅れ、事業費が大幅に膨らんだ。現在の水がめは、紆余[うよ]曲折を経て誕生した▼スポーツの秋を迎えた。喉を潤す一滴が体に染みわたる。「SDGs」の時代だからこそ、大切に飲み干したい。水には流せぬ、1世紀分の労苦が宿った結晶を。<2024・10・7>