衆院選の投票所を設営する舞鶴市職員ら（舞鶴市引土・西舞鶴高）

　いきなり愚痴で恐縮だが、選挙の投開票日に掲載される小欄は書くのが難しい。「投票に行きましょう」という普遍的なテーマになりがちだからだ。だが、今回ばかりは趣向を変え、まずは本音を書こうと思う。 「就職氷河期世代をなかったものにしないで」48歳女性の叫び 　長く選挙取材に携わっているが、率直に言ってこんなにひどい環境で行われた選挙はなかったと思う。 　昨年12月に自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件が発覚して以降、政治の話題は裏金問題一色になった。政治資金規正法が改正され、自民は「裏金議員」の処分や非公認などの対応を行ったが、非公認でも当選すれば選挙後に追加公認する方針を示唆したり、非公認候補が代表を務める党支部に活動費を配ったりと、お粗末な展開が続いた。 　野党もここぞとばかりに「政治とカネ」問題を糾弾し、「自公政権を終わらせる」と喧伝（けんでん）したが、政権交代後に目指す社会像を訴える場面は少なかった。最終盤では与党も「悪夢の民主党政権に戻してはいけない」とお決まりのフレーズで応戦。物価高や人口減少、緊迫する国際情勢など課題は山積しているが、肝心の政策論争は深まらなかった。 　法をつくる政治家が法を守ることは、最低限のルールだ。多額の税金を費やして行う国政選挙で、そんな入り口の議論に終始したことは残念でならない。 　先日、ある候補の街頭演説を取材していた時、通りがかった若者たちが「選挙か。どうでもいいな」と話しているのが耳に入った。気持ちは痛いほど分かるが、「どうでもいい」の先には、私たちや子、孫の未来がある。消極的選択であっても白紙委任よりは良いと自分自身に言い聞かせつつ、重い足を引きずって、今日は投票所に行こうと思う。