日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『西湖畔(せいこはん)に生きる』をレビュー!
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 中国発、大自然の中で人の闇を描く、驚異の"山水映画"! * * * 『西湖畔(せいこはん)に生きる』 評点:★3点(5点満点) 大迫力の「マルチ商法地獄めぐり場面」 陶然とさせられるような、非常に美しい画作りで魅せる作品である。ドローンで撮ったワンカットのように見える驚くべきシーンもある(が、そこで実際にはどのような技術が用いられたのか詳細が分からないので、「そう見える」と書くしかないのは少し残念だ)。 物語は釈迦仏の十大弟子の一人、目連が地獄に堕ちた母親を神通力で救ったという伝説になぞらえて、現代中国でマルチ商法にどっぷり漬かってしまった母子の地獄めぐりと救済を描くというもので、そういう悪質な洗脳セミナーや悪徳商法のあれこれをこれでもかと描く中盤は非常に見応えがある。 実際、筆者の家の近所でも老人を対象にした催眠商法(SF商法)を行っているところがいくつもあり(ガラス張りの建物でやっていることがあり、散歩中に目に入ってくるのだ)、まったく同じメソッドが中国も含む世界中で行われている事実には慄然とせざるを得ない。 とはいえ、アッパーで勢いのある「マルチ商法地獄めぐり場面」はいつまでも続くわけではない。それが終わった後は非常にありきたりな勧善懲悪があり、祭りの後の虚ろさがあり、「マルチに気をつけよう!」という啓蒙ビデオを見せられたような後味が残る。 STORY:最高峰の中国茶の生産地である西湖のほとりに暮らす母子。息子は早く仕事を見つけて母を安心させたいと考えるもうまくいかない。やがて母は友人の誘いで違法ビジネスにのめり込んでいき、息子は母を救うため、ある決断をする 監督:グー・シャオガン出演:ウー・レイ、ジアン・チンチン、チェン・ジエンビンほか上映時間:118分 9月27日(金)から新宿シネマカリテほかにて全国順次公開予定