被災直後の街を狙う窃盗犯、その恐ろしすぎる「蛮行」…卑劣な手口が明かされた
被災地での窃盗被害
今年元旦に発生した能登半島地震の被災地では窃盗事件が相次いでいる。石川県内では震災後から3月5日までに、避難所での置き引きなど51件の窃盗事件が発生しているという。私自身、2016年に熊本大学へ赴任した時、熊本地震の被災者にもなった。大学研究室は地震による影響で結局利用できず、自分の場所は定期的に「漂流」する事態になりながら、被災者の健康格差に関する調査・研究を行っていた。 【マンガ】「南海トラフ巨大地震」が起きた時、もし「名古屋港」にいたら… 協力してもらっていた西原村で被災者の一人ひとりに質問票を説明しながら、関連して生活に関する聞き取りを行った。同村でもやはり不審者(ボランティアを装うことが多い)が来ていて、自警団のように住民が外部からの者をチェックし、犯罪を防ぐために被災後も地元で尽力していた。
避難所の「悪用」
消防団への聞き取りからわかってきたことだが、被災地での窃盗では、避難所が『悪用』されていることがあるらしい。すなわち、避難所には被災地の現状に関わる情報が集中的に提供されている。日々変化する内容に応じてアップデートされていく、必要な情報を窃盗犯が得ることがある。 そして、より被害の大きい(空き家の率が高く、かついわゆる立ち入り禁止の応急危険度判定「危険」いわゆる「赤紙」が張られたケースが多い等)地域を把握したうえで、被災地に入っている兆候があるという。避難所には支援者やボランティアを装って入り、「情報を盗み」そのうえで被災地に入るのだ。 避難所の管理やマネジメントは被災地の治安にも影響があるといえるだろう。避難所のガードを固くすれば、支援が入りにくくなる側面があり、知らない外部者をどこまで許容するか、その管理は今後重要である。真のボランティアかどうかの判別をどうすべきか、判断は難しい。
欧米では軍が出動するケースも
「災害と犯罪」の問題は、欧米では古くから取りざたされてきた。略奪やATMの破壊など、対応するのが警察ではなく軍の出動というのは珍しくない。ただ、最近では日本でも看過ならないレベルになっていると思う。むしろ深刻化していると言ってよいだろう。 平成24年警察白書では、東日本大震災の発生した平成23年(2011年)で、窃盗犯のうち侵入窃盗が福島県だけで前年比35%増の約2400件も発生している。被災地では、窃盗の他、詐欺や暴力事件、性犯罪などあらゆる犯罪が避難所含め発生している。東日本大震災の発生から2011年6月末までの間、岩手、宮城、福島3県でコンビニや金融機関の現金自動預払機(ATM)を狙った窃盗事件が56件(うち未遂7件)あり、被害総額が約6億8440万円に上る。 復旧や復興期においても、被災に便乗した高額なリフォーム料金を搾取する、リフォーム詐欺も頻発するようになった。現石川県知事・馳浩さんも、衆議院議員時代の平成23年8月第177回国会にて、被災地での窃盗等の犯罪に関する質問をおこなっている。東日本大震災発生以後、被災地域での窃盗や空き巣といった犯罪被害が相次いで報告されていた。おそらく馳浩知事も、この被災地の治安悪化について、今は自らの地域の問題として実感しているに違いない。