世田谷一家殺人事件から15年、NHKがネットと報道を結びつけるその意義とは
2000年12月31日、東京都世田谷区上祖師谷の住宅で、一家4人が殺害された事件が起きました。「世田谷一家殺人事件」です。発生から15年となる今年は特別の年で、殺人事件などの時効撤廃を盛り込んだ「時効廃止法」が2010年に成立していなかったら、時効になっていた可能性の高い事件です。13日午後9時からNHK総合テレビで放送されるドキュメンタリー番組「未解決事件 追跡プロジェクト」では、インターネットコミュニケーションを通じて、事件の真相に迫ろうとしています。その取り組みの意義をNHKに聞きました。
この事件解決しないと、未解決事件という言葉がなくならない
この事件取材の指揮をとっているのは、社会部事件デスクの板倉弘政さん(41)。殺人事件など凶悪犯罪を扱う警視庁捜査1課を担当していました。板倉さんは、2004から06年に「世田谷一家殺人事件」を取材しました。犯人が海外に逃亡したと聞けば海外にも取材に行き、現場は数えられないくらい行ったと言います。「捜査員は100人を超える規模で、当時は未解決になるとは思っていませんでした。放送から2週間すると時効になっていた事件だと考えるとゾッとします」と振り返ります。 殺人事件など未解決の重大事件は全国に約380件あると言われます。なかでも、この事件は「未解決事件の代表格」。板倉さんは「本来一番安全という自宅で家族全員が殺され、犯人が15年も分からずにいます。警察では、治安が悪化したターニングポイントとしていて、『この事件が解決しないと、未解決事件という言葉がなくならない』という捜査員もいるくらいです」と、この事件を位置づけます。 しかし、年月がすぎると捜査は進まず、報道各社とも12月にしかこの事件を報じなくなっています。言ってみれば単に毎年のルーティンのようになってしまっていることを板倉さんは憂慮します。 一方で、発生から何年経っても、遺族だけは変わらず取り残されている現状があり、遺族の「殺された家族は犯人を知っている。夢でもいいから犯人を教えてほしい」という切実な訴えがあります。そのたびに、取材チームは考えさせられ、記者たちも思いを強くすると言います。 未解決になっているというには必ず問題があるはずです。特に情報不足は深刻で、それをインターネットを活用して、明らかにしたいというのが板倉さんの思いです。