早い冬眠明け「熊出没」早めの備えを 寄せ付けない環境つくる
昼間は人の気配効果 公園の使用再開
暖冬傾向で、冬眠から目覚める熊の動きが今春は早まりそうだ。昨年はドングリなど餌となる木の実が凶作となり、熊の出没や、熊による人や農産物への被害が全国的に急増した。専門家は「熊が人里に慣れて定着しないよう早めの対策が大切だ」と呼びかける。 【図表】熊対策を防ぐ主な対策 岩手県宮古市の住宅街にあり、小学校に隣接するさくら公園。毎年春には花見客が多く訪れるが、昨春は熊とみられる出没情報が寄せられ、一時的に公園を閉鎖した。山林に近接し、周辺は熊の出没も多い。 安心して利用できる公園にしようと、市の都市計画課は、熊など野生動物の生態に詳しい岩手大学農学部の山内貴義准教授(野生動物管理学)に助言を仰ぎ、園の管理方法を見直した。 まず、熊とみられる出没情報を受けて閉鎖していた公園の使用を、1カ月後に再開させた。熊の行動が活発になる早朝や夕方以降を除いて、昼間は人の出入りがあった方が抑止になるという。山内准教授は「公園の閉鎖は逆効果」とアドバイスする。
低木を切って見通し良く
次に熊の出没を未然に防ぐため、公園周囲の低木を切り、ささやぶを刈り取って見通しを良くした。住宅地や河川敷でも、草木を刈り取って見通しを良くするのは効果的だ。 春を迎えてつるが伸び低木も芽吹いてくるが、その前に刈って様子が変わった、と熊に気付かせるのが大事だ。一方、音や光を発するだけでは、熊が慣れてしまい効果は薄いという。 地域での熊の対策について、山内准教授は「熊の出没を行政機関に報告することが大事」と強調する。行政が出没情報を蓄積することで、対策すべき場所をつかむこともできる。「熊の出没が当たり前になって、報告しなくなるのが一番駄目。報告がなくて『出没ゼロ』と捉えられると、予算も付かない」と指摘する。
今春は「平年並み」
昨年は木の実の凶作によって熊の出没などが急増したとされる。さらに、北東北では鹿やイノシシといった「ライバル」が増加しており、餌不足に拍車がかかった。山内准教授は「弱い母子の熊が餌を求めて人里に下りてくる例が多い」とみる。 木の実の不作で繁殖しづらくなり、今春以降の熊の出没は平年並みになると見込む県もあるが、山内准教授は「裏付ける研究はない」として、楽観しないよう警鐘を鳴らす。(山口圭一)