綾瀬はるか、高い身体能力を封印し新境地 10代の頃の“むき卵”のような感覚に懐かしさ
◆「監督が『なんか動きが機敏だ』と(笑)」 高い身体能力を封印
――『ルート29』の中では、ただ立っているだけ、歩いている、走ってるだけでも、綾瀬さんに見えないんですよね。身体能力がすごく高くて、運動神経の良い方は、立ち姿や歩き姿がどうやってもサマになってしまう。でも、映画の中では、いつもの身体能力の高い方には見えませんでした(笑)。 綾瀬:ああ、確かに! 最初、走って振り向くシーンを何回も撮ったんですね。監督が「なんか動きが機敏だ」と言って(笑)。監督と2人でモニターを見て、「もうちょっと顔を動かすの、ゆっくりの方がいいですよね」とか、何回もやりました。 ――身体能力をそぎ落とすのは大変そうです(笑)。のり子とハルの間に流れる、共鳴し合った空気や関係性もこの作品の魅力ですが、綾瀬さんご自身にもハルのような存在はいますか。 綾瀬:いますね。例えば昔からの友達などは、言葉で言わなくても、調子が悪いことにすぐ気づいたり、何かあったことが必ずバレたり。お母さんもそう。もう言葉じゃないところでつながっているのを感じます。 ――鳥取の自然の中でのり子として過ごした1ヵ月半は、綾瀬さんの人生においてどんな時間になりましたか。 綾瀬:ただただ楽しかったです。監督が同い年だったことも大きくて。同じ年月を生きてきた人が、こういう考えで今を生きているんだと知ることができたのも面白かったです。 ――監督と共鳴するところもありましたか。 綾瀬:あった気がします。監督の指示の仕方はすごく感覚的なんですよね。「もうちょっとここを強く」みたいな具体的な指示じゃなく、説明もなく、自分も聞くわけでもなく、でも監督もきっと同じ感覚なんだろう、みたいな。言葉にするのはすごく難しいけど、感覚として通じるというか。生きてきた時間が重なっているからか、好きな物とか物事のとらえ方が意外と似ている気がしました。私は監督ほど思慮深くはないですけど(笑)。 ――生きてきた時間で言うと、30代も残りわずかですね。30代のうちにやっておきたいことはありますか。 綾瀬:うーん、なんだろう……やり残したこととか特にないんですよね。でも、ここでこれまでの経験を一度全部そぎ落として、むき卵のようになれたことで、また新たな時間に進んでいける気がします。 (取材・文:田幸和歌子 写真:松林満美) 映画『ルート29』は公開中。