綾瀬はるか、高い身体能力を封印し新境地 10代の頃の“むき卵”のような感覚に懐かしさ
◆ハル役・大沢一菜から学ぶところが多かった
――監督が綾瀬さんの一人のときの素顔を見抜いたように、のり子を演じていく中でご自身も気づいていなかった一面を発見した部分もありますか。 綾瀬:のり子がなぜ他者に対して壁を作るようになったかという話を監督がされたとき、「たぶん良かれと思って言ったことが、相手に違う感じに受け取られてしまったりということを繰り返していくうち、自然に人と積極的にコミュニケーションを取らなくなったんじゃないかと思う」とおっしゃったんですね。私はそれ、すごくあるなと思ったんです。 ――綾瀬さんにも同じようなご経験や思いがあったのでしょうか。 綾瀬:そうですね。ハルみたいに、どんな人が現れても、その人たちを決めつけたり否定したりするのではなく、自然にその人たちをそのままに受け入れる人ってなかなかいないと思います。だからこそ、そんなハルといることでのり子も心も開けたんだろうなと思います。私はハルみたいな人になりたいという憧れがあるんですよ。 ――ハルを演じる大沢一菜さんには唯一無二の存在感がありますね。もともと大沢さん主演の『こちらあみ子』がお好きだったそうですが。 綾瀬:一菜ちゃんがとにかく魅力的で。実際に会ったときも「あみ子!」と思ったんですが、実はすごくシャイで、めっちゃ可愛いんですよ。最初は人の後ろに隠れていたくらい恥ずかしがっていて、可愛かったんですが、お芝居になったら急に目つきが変わるの。 ――カメラが回ると、スッと入り込む感じなんですか。 綾瀬:そうなのかな。実際にこういう子がいるんだなと思うような、お芝居に見えない、力の抜けた自然なお芝居なんですよ。でも、思った以上に恥ずかしがり屋さんだったり、すごい気遣い屋さんだったりで。 ――大沢さんに学ぶところが多かったとおっしゃっていましたね。例えばどんなところでしょう。 綾瀬:監督の世界観にすごくハマる女優さんなんですよね。クランクインが迫る頃、監督が伝えようとしなくていいし、もっと自分を感じてくださいと言った意味も、一菜ちゃんを見ていると「こういうことなんだろうな」とわかる気がしました。 ――今までやってきたどのお芝居とも、アプローチの仕方が違っていましたか。 綾瀬:違いましたね。役者としていろいろ演じていく中で、稽古して積み上げていって、見せたり演じたりという経験を20年以上やってきました。でも、1周して1回それを全部そぎ落として、むき卵になったような懐かしい感じもあるんですよ。 ――むき卵ですか。 綾瀬:はい。10代の頃とかって、たぶんそんな感じだったんです。でも、いろいろ経験を積むにつれて、演技していくことや経験の中で自然と身につけてきたものがあるんですよね。それをリセットするのは新鮮でした。