農中が再度資本増強へ、繰り返す「逃げ遅れ」-巨額資産が足かせに
農林中金を所管する坂本哲志農水相は21日の会見で、農林中金の経営について同省として「金融市場の動向等を踏まえつつ、十分注視していく」と述べた。
あだとなったのは債券偏重の投資戦略だ。3月末時点の市場運用資産残高56兆円の内訳は債券が56%と最も多く、次いでクレジットが42%、株式は2%だった。しかし、戦略の修正は容易ではなさそうだ。
野崎氏は、農林中金はあくまで預金取扱金融機関であり「大々的にエクイティー投資にかじを切ることは適切でない」と言う。また、金融庁関係者は農林中金との対話の中でポートフォリオ多様化の必要性を伝えてきたと明かす。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資の拡大なども今後の選択肢となるが、相応の時間が必要とみている。
農林中金の北林太郎最高財務責任者(CFO)は会見で、24年度について「低利回り資産を売却して収益が高いと見込まれる資産への入れ替えを行い、ポートフォリオを改善していく」と述べた。
農林中金が運用する資金は、全国の組合員がJAなどに預けた資金のうち、貸し出しや運用に使われなかった「余裕金」が元手となる。出資者はJAや漁業協同組合(JF)など、23年9月末時点で3200超の団体が名を連ねる。農業や漁業、林業の一次産業従事者などは農林中金の業績の影響を受ける可能性もある。
資本増強問題を受け、京都府森林組合連合会の松田純一参事は、最終損失計上で配当がなくなると「影響はある」と懸念を示しつつ、農林中金は最近は林業支援にも力を入れていると収益還元以外の活動を評価した上で「組合員が困った時に助けてくれるような組織であり続けてほしい」と期待を示した。
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--取材協力:浦中大我、グラス美亜.
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Takashi Umekawa, Takako Taniguchi