「新規参入でもシェアを取れる」トリドールHD粟田社長が語る、外食産業市場のダイナミックな可能性とは?
「マクドナルド」の日本第1号店ができたのは1971年です。ここから1980年まで外食産業は急成長期にあり、毎年10%近い対前年伸び率を維持していました。 1981年の外食産業市場規模は15兆6800億円。80年代も毎年平均6%の対前年伸び率を維持。市場は拡大し続け、「マクドナルド」や「ロッテリア」、「ケンタッキーフライドチキン」などのファストフード、「すかいらーく」や「デニーズ」といったファミリーレストランが売上の上位を占めていました。それでも上位100社の市場占有率は10%ほどで、個人店も大手企業と同じように伸びていたと考えられます。 外食産業は1997年にピークを迎え、市場規模は29兆円に達します。そこから業界全体の伸び率はゆるやかに減少し、2003年からはほぼ横ばいとなりました。 コンビニエンスストアなど購買チャンネルの増加は外食市場がシュリンクしている大きな要因でしょう。ただ、私は消費者のニーズが多様化し、消費者が求めるものと飲食店が提供しているものの間にギャップが出てきたことも、市場が縮小した一つの理由だと考えています。 例えば、高度経済成長期のファミリーレストランは、憧れの存在だった洋食メニューを多く揃え、店の造りも含めて外国で食事をするような体験を提供していました。それが大人気となり、いくつものファミリーレストランチェーンが生まれたのです。しかし、ファミリーレストランは今、行列ができるような人気の業態ではありません。消費者のライフスタイルが変化し、昔は特別だった洋食も、今は日常になっています。 今でもファミリーレストランを好む方はいるけれど、「子連れや若者だけでも入りやすいから行く」「長時間の作業や勉強をする場として行く」など、当初とは違う目的を持っているユーザーが多いのではないかと思います。そうなると競合はカフェ業態になり、価格競争に巻き込まれてしまう。 今消費者が何を求めているのかインサイトをうまく捉え、それを業態に落とし込めなければ、外食産業はさらに縮小していってしまうのではないかと危惧しています。
粟田 貴也