デッドボールでガッツポーズをする選手【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第116回
5月24日の中日-ヤクルト戦。2-2の同点で迎えた延長10回表に、私の中で大きな事件が起こりました。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー 先頭の長岡秀樹選手がヒットで出塁し、武岡龍世選手送りバントで1アウト2塁。続く村上宗隆選手が申告敬遠され、1アウト1,2塁として、ヤクルトの次の打者は8回から守備固めとして入っていた岩田幸宏選手でした。 その1球目をファウルしたあとの2球目が胸元にいき、岩田選手は必死に避けたものの胸を擦ったというデッドボールの判定。次の瞬間、岩田選手は自軍のベンチに向かってガッツポーズをしたのです。 これまで長い間野球を見てきましたが、デッドボール後にガッツポーズを見たのは初めてでとても驚きました。高校野球では時折見られる光景かもしれませんが、その仕草がとても新鮮に映ったんです。私と同じように感じた方も多かったようで、SNSでも話題になっていました。 その後、試合は2アウト満塁になり、西川遥輝選手が四球を選び押し出しで勝ち越します。最終的なスコアは5-2となりましたが、岩田選手がデッドボールで次に"つないだ"ことが勝利につながりました。この日の主役ではなかったかもしれませんが、大きな働きだったと思います。 先日もこの連載で登場した岩田選手(この連載の準レギュラーの座を確保しつつあります)は、代走で牽制死のあと涙を流しました。その時、育成から這い上がった岩田選手が1プレーにかける重みをあらためて感じました。言葉よりも重たい涙でしたね。 岩田選手の1打席は、おそらく重みが違うのでしょう。もちろんどの選手も、打席が軽いなんてことは思ったことはないはず。しかし、まだ打席に立つ回数が少ない岩田選手がバッターボックスに入る時の気合いは、並々ならぬものがあると推測できます。 岩田選手のプレーを見るたび、涙が出そうになります。岩田選手のプレーから感じるのは、「後悔したくない」という思いです。1打席でも、守備機会でも、絶対に後悔しないプレーをする。自分にそう課しているように見えます。だから、岩田選手を応援したくなるのかもしれません。