（ブルームバーグ）： ロシアの戦時経済は過熱感が目立った今年１－６月（上期）を経て、成長がピークを過ぎた。アナリストがこうした見方を示した。

ルネッサンス・キャピタルのエコノミスト、オレグ・クズミン氏（モスクワ在勤）は「今年半ばに成長のピークは過ぎた公算が極めて大きい」と指摘。「来年は『ソフト』ないし『ハード』なランディングとなるのか、成長見通しは全く分からない」と語った。

過去数四半期の急成長をけん引した軍需生産は拡大を続けているものの、他のセクターの落ち込みを補うほどではないと、フィンランド中銀の新興国研究所は10月のリポートで指摘。国際通貨基金（ＩＭＦ）は22日に発表した世界経済見通し（ＷＥＯ）で、来年のロシアの国内総生産（ＧＤＰ）成長率予想を従来の1.5％から1.3％に引き下げた。

Ｓ＆Ｐグローバルによると、ロシアの製造業購買担当者指数（ＰＭＩ）は９月に2022年４月以降で初めて縮小の領域に落ち込んだ。同国経済省が今月発表した８月のＧＤＰ成長率は収穫期の遅れも響き年率2.4％と、22年にウクライナ侵攻開始直後に陥ったリセッション（景気後退）以来の低成長だった。

軍需産業以外の成長減速は、ロシアに戦時経済が定着し続けていることを浮き彫りにする。同国経済は防衛支出の増加を追い風に23年に急速に立ち直ったが、いまや軍需生産が拡大すれば民間部門が犠牲になるという現実的な懸念がある。

ロシア連邦統計局が23日遅くに発表した９月の鉱工業生産は前年同月比3.2％増と、前月の2.7％増から大きく拡大。防衛関連の生産は急増した。

インフレを抑え込む目的で、ロシアの政策金利は既に危機時の水準にある。中央銀行は25日の政策会合で金利を20％と、侵攻直後と同じ水準に引き上げる可能性もある。同国の消費者はこれまで、米国など西側が科す懲罰的な制裁の影響をほぼ免れてきたが、景気が下降線をたどれば経済的な痛みが及ぶ恐れもある。