国民民主取り込みの財政拡張に強まる政府の警戒感 3減税譲歩なら21兆円規模の税収減に
第2次石破茂政権が11日に発足したのを受け、政府・与党は総合経済対策の策定のほか、令和7年度予算案の編成や税制改正の作業を本格化する。焦点は多数派形成に向け国民民主党を取り込むため、経済政策で着地点が見いだせるかだ。年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の見直しなど国民民主が掲げる3つの減税策が全て実現すれば、合計21兆円規模の税収減が見込まれ、政府は協議の行方に神経をとがらせる。 【図で解説】複数の「年収の壁」と国民民主党の主張 国民民主は衆院選で国民の「手取りを増やす」と訴え、議席を大幅に増やした。目玉となる「年収の壁」見直しでは所得税の非課税枠を103万円から178万円に引き上げるよう求めるが、実現した場合、政府試算では国と地方の税収が年間計約7兆6千億円減る。 国民民主はガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除にもこだわる。ガソリン価格が一定基準を超えると1リットル当たり25円10銭安くなり、政府は約1兆5千億円の税収減を見込む。また、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは消費税率の5%への引き下げが実現すれば、約12兆円の税収減になると試算する。 3つの減税策が仮に全て実現した場合、税収に約21兆円の穴が開くだけに、「国民民主案を丸のみはできない」(財務省幹部)と危機感が漂う。 木内氏は与党と国民民主が週内にも始める税制協議で、税収減を抑えるため103万円の壁を巡る非課税枠の引き上げ幅を抑えたり、対象者を低所得者に絞る方向で議論するのではと予想する。 首相は得意の安全保障問題などに比べ経済政策への関心は高いとはいえず、岸田文雄前政権の政策をほぼ踏襲している。与野党が〝バラマキ〟策を競った衆院選の直後とあって経済対策全体の規模拡大も避けられず、多数派工作に向けて安易に国民民主へ譲歩するのではないかと政府内には疑心暗鬼も生じている。(米沢文)