にしき堂「楓果」が観光土産の厚労大臣賞とスペイン大使館賞のダブル受賞。背景に400年前の人命救助の歴史
優れた観光土産品の育成・を目的とした「NIPPON OMIYAGE AWARD」(全国推奨観光土産品審査会)の表彰式が2月20日に行われた。特に優れた商品に授与されるのが、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通の各大臣賞および観光庁長官賞だ。 菓子部門の応募商品の中から厚生労働大臣賞に選ばれたのは、にしき堂(広島県)の「楓果(ふうのか)」(6個入り、1200円)だ。「楓果」はグローバル部門のスペイン大使館賞も受賞した。 栗をぜいたくに練り込んだ白餡を栗の風味香るカステラで包み込んだ芳醇な味わいの和菓子。「徳川家弘氏の徳川宗家第19代継承を記念して創作しました」と話すのは、にしき堂の大谷博国社長だ。 楓(フウ)は、カエデとは別種で、中国東南部・台湾が原産地の落葉樹。樹形は整った三角であり、そうとうな高木に育ち、しかも樹脂が香わしいといった特徴から、中国皇帝の宮殿の庭に植えられた。日本では、江戸時代中期に中国商人が持ち込み、その歴史的背景を知った德川八代将軍吉宗が、江戸城内に植えたのが最初とされる。
吉宗より後の歴代将軍は、季節の移ろいとともに色彩を変えていく楓の葉を見ては、中国の乱世を思い、日本に太平の世が続くことを祈ったのではないだろうか。 現在、楓は、栃木県の日光東照宮や各地の東照宮など限られた場所でその優美な姿を見せている。楓果には、中国皇帝の庭、德川将軍の庭、皇居の庭、そして各地の東照宮といった高貴の地で生育する楓の木を連想させる、品格ある味わいが実現している。
「楓果」は、グローバル部門のスペイン大使館賞も受け、ダブル受賞となった。その背景には、今から約400年前の1609年に、メキシコに向かう途中のスペイン領フィリピン総督ドン・ロドリゴらを乗せた帆船サンフランシスコ号が房総半島沿岸で難破、現在の千葉県御宿町の岩和田海岸で住民らによって317人の乗組員が救助された歴史がある。ドン・ロドリゴらは、徳川家の譜代大名だった地元領主の判断で、地元の寺や住民の家々に滞在、手当てを受け、決して裕福ではない住民らは食べ物を提供した。遭難者たちは、江戸城では将軍徳川秀忠から、また、駿府では大御所・家康のもてなしを受けた。家康が家臣・三浦按針に建造させた船でメキシコへ渡航することができた。 御宿町の「ドン・ロドリゴ上陸の地」にはこれまで、多くの海外要人らが訪れている。2022年には、同町の石田義廣町長の案内で、EU元大統領でベルギーの元首相でもあるファン・ロン・パイ氏が来訪した。 楓果を食べながら、こうした徳川家と平和、人命救助の歴史に思いをはせてみたい。