「無理なコスト削減はやっていない」と犬飼社長 「車軸データ不正問題」の端緒となったJR貨物の風土とは
代替輸送の手配に追われた運送事業者は「発生した費用は今後JR貨物と協議する」と憤る。貨物鉄道を利用しているというメーカーの担当者は、「安定輸送はメーカーにとっていちばん大事。JR貨物にはこうしたことが二度と起きないよう早急に対策を講じてほしい」と注文をつける。 ■3つの車両所での「不正」 先述したように問題が起きていたのは3つの車両所だ。ただそれぞれで「不正」の実態が異なる。 検査記録がデジタル化されていた広島車両所では、基準値内の圧入力値を入力しなければシステム上、検査表が作成できなかった。そのため、過去の正常値を入力し、データを改ざんしていた。
川崎車両所では上限値を超えた際、機械的に上限値を入力していた。北海道の輪西車両所に至っては、上限値を超えた波形データを無邪気にそのまま検査表に添付していた。 車両所の助役や主任もこうしたデータを目にしていたが、「不正」は黙殺されていた。それも無理はない。圧入力値の上限を超えた際の扱いをどうするか、社内にルールがなかったのだ。作業員らには不正を働いている認識すらなかった可能性が高い。 車軸は、それを通す車輪の穴よりわずかに太くつくられている。圧力をかけて車輪を車軸に通すことで車輪が固定される仕組みだ。
「不正」に関与した社員は、圧入力値の下限を下回ると固定に不具合が起きると認識していた一方、「上限を少し超えても問題はないと思っていた」などと話しているという。こうした認識はJR貨物特有のものではなかった。 国交省が全鉄道事業者に車輪の緊急点検を指示した後、早速、JR北海道の旭川運転所所属の普通列車2両で圧入力値の「目安」超えのデータが見つかった。 JR東海でも在来線の11の車軸で最大圧入力値を超えていた。JR貨物と同様、超過した際の扱いについてルールがなかったことが目安超過の原因だった。
これらの2社は、圧入力値の波形データや「締め代」(車軸の太さと車輪の穴の寸法差。車輪の穴より車軸がわずかに太い)を管理しており、安全は確保されているとする。 波形データがなだらかであれば「かじり」のような傷は生じていないと判断され、締め代が管理されていれば「車輪はしっかり固定されている」ことになるのだという。 ■「超過」への意識は希薄 ただ、国交省は2社に対して「なぜ、締め代の管理ができていることなどで安全が確保されると言えるのか、さらに詳細を報告するよう求めている」(鉄道局技術企画課)。