「剣歯」持つ太古の捕食者、新たな化石見つかる 同分類の動物で最古 スペイン
(CNN) 恐竜が地球を闊歩(かっぽ)するより前、最初の哺乳類の登場から数えれば何千万年も前には、長い鋸歯(きょし)状の犬歯を備えた哺乳類の遠縁に当たる生物が、強い肉食動物として地上に君臨していた。ゴルゴノプスと呼ばれるこの分類群は、これまで確認された「剣歯」を持つ動物の中で最も年代が古い。長年化石による記録からは姿を消していたが、ここへ来て新たにゴルゴノプスと認められる化石が見つかった。 【画像】発見されたゴルゴノプスの化石の部位を示した図 この細身の捕食者を知る手掛かりとなる化石の大半は、2億7000万年前より新しい年代のもの。ところが最近見つかった化石はこれまでより古い2億8000万年前~2億7000万年前のものと考えられている。 新たに発見されたゴルゴノプスは、獣弓類のグループでも最古の部類に入る。獣弓類にはゴルゴノプスだけでなく、現代の哺乳類の祖先や今は絶滅した非哺乳類の動物群が含まれる。 ゴルゴノプスは約2億5200万年前に姿を消し、同名の分類群もそこで途絶えた。全てのゴルゴノプスにはナイフのような犬歯があるが、体の大きさは種によって様々だ。猫のように小さい種もいれば、ホッキョクグマほど大きい種もいる。 新たに見つかったゴルゴノプスの化石の部位は、ナイフ状の犬歯、顎(あご)の一部、脊椎(せきつい)の一部、肋骨(ろっこつ)、尾骨、つま先の骨、後肢の大半の骨。17日刊行のネイチャー・コミュニケーションズ誌で研究者らが明らかにした。 米シカゴにあるフィールド自然史博物館のキュレーターで論文共著者のケン・アンジエルチク氏によると、このゴルゴノプスは中型犬くらいのサイズで、体重は30~40キロだったとみられる。 4本脚で尾が長いという点を除けば、ゴルゴノプスはそれほど犬に似ているわけでもないとアンジエルチク氏は指摘する。体毛がなく、目に見える形で耳がついていないという特徴は爬虫(はちゅう)類に共通する。しかし、体形的にトカゲを思わせる部分があるとしても、ゴルゴノプスを 「リザード・ドッグ(トカゲ犬)」とは呼ばないで欲しいと、同氏はCNNとの取材で述べた。 トカゲは爬虫類の一種であり、ゴルゴノプスのような非哺乳類の獣弓類は全く異なる進化系統に属する。ゴルゴノプスには遠い親戚に当たる哺乳類といくつか共通の特性がある。その一つは異なる形状や大きさの歯を持つことだ。それぞれの歯は物を食べる上で別々の役割を有しており、これは現代の哺乳類と大いに共通する点だとアンジエルチク氏は述べた。 哺乳類の場合と異なり、ゴルゴノプスの歯は一生の間に何度も生え替わっていたようだ。長い犬歯も例外ではなかった。現代の哺乳類の大部分が一生に一度しか歯の生え替わりを経験しないのを踏まえると、ゴルゴノプスなどの獣弓類は全般的にどちらかと言えば現代のクロコダイルに相当する。アンジエルチク氏によると、クロコダイルの歯は継続して生え替わる。 古生物学者らは、当該のゴルゴノプスの骨を地中海に浮かぶスペインの島、マジョルカ島で見つけた。2019年と21年に行った調査旅行での発見だった。論文の上席著者を務め、カタルーニャ古生物学研究所で計算バイオメカニクスなどの研究グループを統括するジョゼップ・フォルトゥニー氏が明らかにした。それまで確認されたゴルゴノプスや獣弓類の中で最古の年代に属するという。 アンジエルチク氏によると、科学者らの当初の計算では、獣弓類の化石が出現し始めるのは約3億年前の岩の中と考えられていた。実際にそうした岩から化石が見つかることはなかったが、今回の化石が出た岩の年代は約2億7000万年前だった。少なくともその年代か、それ以上古い年代に起源を有する今回の化石は、研究者らが獣弓類の進化の年代を明らかにするのに寄与する。 ペルム紀(約2億9900万年前~約2億5200万年前)前期における獣弓類の進化を微調整することは、哺乳類の祖先を追跡する上でとりわけ重要だ。米ニューヨーク市の自然史博物館で恐竜古生物担当キュレーターを務めるロジャー・ベンソン氏はそう指摘した。同氏は今回の研究に関与していない。 新たな化石が見つかった地点も従来とは異なっている。これまでゴルゴノプスの化石の存在が把握されていたのは、南アフリカやロシアの乾燥した高緯度地域のみだった。 記録上最古となるゴルゴノプスの化石がマジョルカで見つかったことを踏まえると、最初期の獣弓類の化石はまだ発見されておらず、古生物学者がこれまで調査していない地域に眠っている可能性があると、アンジエルチク氏は示唆した。