女性を悩ませた「29歳までに結婚」も「今は昔」 よりシビアになった令和の意識
悩みに変化「最低限生きていけるよう…」
「今思えば、私も何かしらにとらわれていたのではと思います。『もう29じゃん、30代になっちゃうじゃん』と言われる機会も多かった。その反動として抵抗する原稿を書いたのだと思います」。ライターの田中春香さん(36)は自身が29歳だったころを振り返る。 ただ、田中さん自身が「30歳までに結婚」という意識がより強かったのは、24、25歳のころだったという。「友人らとの会話を通してすり込まれていたと思うし、まだ仕事の面白さや責任を結婚とてんびんにかけることが想像できなかった。当時は周りに妊娠・出産する人が少なく情報が限られていた」 実際に29歳になった田中さんは、結婚よりも仕事に悩んでいた。いつかは子どもを育てながら管理職を目指したいと考えていたが、そのときの職場にロールモデルとなる女性はほとんど見当たらなかった。「どこに目標を置けばいいんだろう。自分らしく働ける場所はないかな」 田中さんは新卒で入った会社を退社。同じころ、2年ほど付き合った男性とも別れたという。 その後、コロナ禍を経て経済状況は悪化し、婚活どころではなくなってきている。田中さんは予想外の影響で仕事で苦労した。より下の世代の女性たちの意識にも変化が生じていると感じる。 「今の29歳の女性はもっとシビア。30歳までに最低限、生きていけるよう仕事などを確立しなければという焦りになっている。かつての『29歳問題』とは質が変わっている」 田中さんは最近、29歳の女性の知人からこんなことを言われた。「こんな経済状況で結婚できるのはすごいこと。経済力がそこそこあって、自分の仕事にもある程度自信や安定があり、精神的に大人だということだから。私らしさを考えられるのはぜいたくなことだ」
朝日新聞社