アマゾンの逆襲がはじまった…動画配信の王者・ネットフリックスが「広告の安売り」を強いられている理由
Netflixは広告付きプランを2022年11月に導入したが、インプレッション(表示回数)が不足しており、自社で設けた広告視聴数の保証を満たすことができていない。広告主に対して約束した視聴数を実現できず、広告費の一部を返金する事態にまでなっているという。 ■広告は増やせず、料金は上げられず、会員は増えない… 堅調な成長を維持してきたNetflixはいま、ジレンマを抱えている。以前は月額料金を取る代わりに広告なしで番組を配信し、コマーシャルだらけのTVに辟易した人々の心をつかんだ。アプリを開けば、ストーリー性あふれる独自作品群に、広告なしで没入できる時間が約束されていた。 だが、いまや高額のサブスク料金を好まない視聴者が増えている。アメリカだけで、Hulu、Disney+、Max、Peacock、Paramount+など、10種近くの主要動画配信メディアが乱立している。観たい作品が分散してしまい、個々のサービスに十分な予算を割けないのが現状だ。ユーザーたちはたとえ広告が表示されても、少しでも割安のプランを選ぶ傾向がある。 ストリーミングの未来は、広告まみれになるのだろうか? 良いニュースとして、Amazonは既存のTVと比較し、広告の挿入時間を控えめにする意向を示している。Netflixもこれに倣うだろう。米広告企業・モロコ社の成長戦略部門の責任者であるデイヴ・サイモン氏は、英BBCに対し、「多くのストリーミングサービスはCM時間を短縮しており、中には大幅に抑えているところもあります」と語る。 TV番組のように、30分番組においてコンテンツが22分しかなく、広告が8分もある時代は終わった、とBBCはいう。例えばDisney+は、コンテンツ1時間あたりの広告時間を4分に抑えている。 高額なサブスク料金とプロダクト・プレイスメントで収益を高めたいNetflixと、基本料金を無料化する代わりに大量の広告枠を販売するAmazon Prime Video。視聴者の支持を得るのはどちらの戦略か――。そんな目でストリーミング・サービスを比較するのもまた面白い。 ---------- 青葉 やまと(あおば・やまと) フリーライター・翻訳者 1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。 ----------
フリーライター・翻訳者 青葉 やまと