本当はおかしい日本の部活動? 海外から異常だと思われている、負けたら終わりのトーナメント試合の多さ、応援に専念するだけの部員たちの姿
分不相応のすすめ #3
「これくらいが自分にはちょうどいい」という「分相応の壁」は、ときに挑戦や成長を妨げてしまう。その傾向が顕著に現れている日本の部活動の「異常性」だ。 【写真】部員200人のうち、ベンチに入れるのは20名強という部活動の異常性
この日本独特の文化を参考に、「分相応の壁」を打破するためのメソッドを、書籍『分不相応のすすめ』より一部抜粋して紹介する。
ダメなものはダメだから
中学・高校の6年間は、価値観や人格を形成していく上で、とても大切な期間となります。その期間の大きな活動の1つになっているのが、部活動です。学生たちは、運動系の部活でも、文化系の部活でも、それぞれにかけがえのない青春を謳歌することができます。 そこに、疑問を持つことはあまりないかもしれません。しかし、海外から見ると、特に運動系において、日本の部活動には2つの「異常性」があるのだといいます。※2
トーナメント制の大会が多すぎる
1つめの異常性は、1回負けたら終わりのトーナメント制の大会ばかり、という点です。野球、サッカー、テニスなど、多くの競技において、総当たりの勝敗で競うリーグ制ではなく、トーナメント制が当たり前になっています。4000校が出場する場合、1回戦が終わる時点で、負けた2000校は活動が終わってしまうことになります。 優勝するまでの道のりには、ただ1回の負けも許されません。だから、必然的に、「負けない」ための技術や戦術を重視するようになります。「点を取られなければ負けない」が基本である以上、守りを優先しやすくなるのは当然でしょう。 しかし、こうした「負けない」ための戦い方や考え方を偏重すると、「勝つ」ための攻撃や挑戦的なプレーからはどんどん遠ざかっていってしまいます。 本来のスポーツとしては、トーナメント制だけでなく、勝っても負けても次の試合があるリーグ制で、MTM(Match Training Match)が望ましいものとされています。MTMとは、試合をしたら、その結果を踏まえて、選手も指導者も考えてトレーニングをして、次はより良い試合ができるように挑む、「試合 → 練習 → 試合」の流れを意味します。 この「MTM」の繰り返しが、選手と指導者の成長にとって大切であると考えられています。 こうした問題意識の下、サッカーにおいて、構想から10年近くをかけ、苦労の末に実現したのが、2011年から始まった日本サッカー協会主催の「高円宮杯U-18サッカーリーグ」です。 各都道府県に分けられる「都道府県リーグ」、その上の全国9地域に分けられる「プリンスリーグ」、さらにその上の東西2つに分けられる「プレミアリーグ」の三層構造で、4月から12月までかけてリーグ戦が行われるものです。それぞれのリーグの上位チームと下位チームでは、毎年、入れ替え戦もあります。 このリーグ制の創設は、健全なMTMの中で技術・戦術・マインドを成長させることができる環境づくりの大きな前進といえるでしょう。