<春はばたく>第92回センバツ注目校/4 県岐阜商(岐阜) 練習、無駄なく明確
流れるような県岐阜商の練習には、無駄がない。選手たちは5カ所に設置されたケージで打撃練習を終えると、その隣でスイングスピードの計測や自転車型トレーニングマシンに取り組む。就任当初と比べ、鍛治舎巧監督(68)は「隔世の感がある」と語る。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 母校の監督に就任したのが2018年3月。選手が雑談して打撃練習の順番を待っているのを見て、時間の有効活用の必要性を痛感した。パナソニックの役員を退任した14年、秀岳館(熊本)監督に転じた。16年春から4季連続の甲子園出場に導き、3季連続で4強入りした。平日の練習時間は秀岳館の半分の約4時間。このため、練習の質を高めようと、練習前から選手とメニューを共有するとともに、複数の練習を同時にできる環境を整えた。 さらにこれまでの経験を基に「球速140キロ」「スイングスピード140キロ」といった全国で戦える具体的な数字を掲げ、選手の目標を明確にしている。19年秋の公式戦に登板した5投手は、145キロ右腕の森大河(2年)をはじめ、最速140キロをクリアしている。練習試合の相手もこれまでは近隣の高校が中心だったが、大阪桐蔭や天理(奈良)、桐蔭学園(神奈川)といった甲子園で優勝した強豪私学の胸を積極的に借りている。 数々のチーム改革に取り組んできた鍛治舎監督は「伝統の重圧を振り払いたかった」と、ユニホームも新しくした。アンダーシャツを濃紺から明るい青のロイヤルブルーに、「GIFUSHO」の胸の文字とストッキングを山吹色に変えた。センバツでは、胸の文字もロイヤルブルーにするという。 公立校最多の春夏通算87勝を誇る県岐阜商。春3回(1933、35、40年)、夏1回(36年)の優勝はいずれも戦前にさかのぼる。鍛治舎監督の指導を受け、主将の佐々木泰(2年)は「全国のレベルを知ることができ、自信を持って戦える」と、戦後初の優勝に向けて手応えを口にしている。【鈴木英世】=つづく