シャープがEV市場に参入へ、鴻海との連携で「未来の車載空間」を提案、移動体験の“再定義”に取り組む背景
■足回りは鴻海のプラットフォームを活用 LDK+は、V2H(Vehicle to Home)機能も備えている。EVに搭載された大容量バッテリーと家庭をつなぎ、双方向のエネルギーのやり取りを可能にする。電力需給のピークシフトや、災害時の非常用電源としての活用が期待できる。 種谷氏は「家とEVをつなぎ、生活の質を向上させる新しい価値を創造したい」と意気込みを語る。 シャープのEV開発は、親会社である鴻海(フォックスコン)の総合的なEV戦略の一環として位置付けられている。シャープが開発中のLDK+は、鴻海のSUVモデルである「モデルC」をベースとしており、そこにシャープ独自の技術や設計思想を組み合わせている。シャープは車両の基本的なプラットフォームに投資する必要がなく、車内空間のデザインや独自の機能開発など、付加価値の創造に集中できている。
種谷氏は「鴻海のプラットフォームを活用することで、シャープは車の基本的な部分に投資する必要がなく、独自の価値創造に集中できる」と語る。この協業により、シャープは自社の強みを最大限に生かしたEV開発を進めることが可能となっている。 両社の強みを生かしたこの協業は、EV市場に新たな価値を提供することが期待されている。シャープの家電技術やブランド力と、鴻海の製造ノウハウや既存のEVプラットフォームの組み合わせは、競争の激しいEV市場において独自のポジションを確立する可能性を秘めている。
世界最大の電子機器受託生産企業として知られる鴻海は、その強みを生かしEV産業に参入、わずか数年で大きな存在感を示している。 鴻海のEV事業は、EMSと自社ブランドの両輪で展開されている。EMS(Electronics Manufacturing Services)では、他の自動車メーカーやブランドのためにEVの設計・製造を受託する。一方で、自社ブランドのEV開発も積極的に進めている。 2022年3月、鴻海は初のEVとなる商用バス「モデルT」を台湾南部の高雄市の路線バス事業者に納入した。個人向け市場では、SUVの「モデルC」と上級セダンの「モデルE」の投入を予定している。さらに、台湾の自動車メーカー裕隆集団と提携し、「納智捷(ラクスジェン)」ブランドでEVを販売。「ラクスジェンn7」は鴻海にとって最初の市販車となった。