希望する男優と共演できないとなると ジュリア・ロバーツ、蒸し返された30年前のトンデモ黒歴史
ただし、ストッパードが要求してきたギャラは、100万ドル。さすがにそれはスタジオが許さないかと思っていたら、ロバーツが主演に興味を示し、状況が変わった。『プリティ・ウーマン』(1990)で大注目されたスターが出てくれるとあれば、ヒットが期待できる。立派な脚本と理想的な主演女優が揃ったこの映画の撮影準備は着々と進み、ズウィックとロバーツは同じ飛行機でロケ地のロンドンに向かった。 ■共演希望男優に「私のロミオになって」
その機内で、ロバーツは突然、シェイクスピア役にはダニエル・デイ=ルイスが良いと言い出す。そう聞いて、ズウィックは困った。ズウィックはこの役のために多くのイギリス人俳優と話をしており、その中にはデイ=ルイスもいたのだが、ジム・シェリダン監督の『父の祈りを』(1993)に出演を約束しているからと、断られていたのだ。 そう言ってもロバーツは「私なら彼を獲得できる」と主張。ロンドンの空港に到着するやいなや、「私のロミオになって」というカードと共に、デイ=ルイスに24本のバラを送るよう、アシスタントに命じた。
候補者たちとのオーディションの初日にも、ロバーツは、デイ=ルイスが出てくれることになったから今日の予定をキャンセルしてと言い、ズウィックを混乱させる。デイ=ルイス本人と会って確認すると、彼の答は以前と同じで「シェリダンの映画があるから無理」だった。 望みがかなわなかったロバーツは、その後、レイフ・ファインズ、ヒュー・グラント、コリン・ファースなど優れた俳優が次々やってきてくれても、まるで関心を示さず。そんなことが2週間ほど続いた後、ようやくポール・マッギャンとはなんとか次の段階に進められることになり、衣装を着て、ヘアメイクをしたうえでの本格的なカメラテストが行われた。
ところが、実際にシーンを演じてもらうと、まるでうまくいかないのだ。ロバーツがアクセントに気を取られ、自然な演技ができないせいである。アメリカ人のロバーツはこの役のためにアクセントを習得する必要があり、ダイアレクトコーチからテープを渡されていたのだが、明らかに練習が足りていなかった。まだ23歳の彼女は何もかも嫌になったのだろうか。翌朝、何の断りもなくホテルをチェックアウトして、ロサンゼルスに帰ってしまった。