「自分だけは絶対に殺さないで。そうすれば、こうやってまたライブで会うことができる」……銀杏BOYZ、18~19年ぶりの全国ツアー・富山公演レポート
昨年9月からスタートした銀杏BOYZのライブツアー「世界ツアー弾き語り 23-24 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl」。その名の通り、峯田和伸(ボーカル)がたったひとりで弾き語りでライブを行うツアーで、「全国47都道府県を巡る」というもの。この3月は前半に北陸+静岡などを巡り、中半からは東北+九州エリアでのステージがある。 【全ての写真】銀杏BOYZのライブツアー「世界ツアー弾き語り 23-24 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl」富山公演 ここまで細かく全国を巡るツアーとしては2005年の「世界ツアー」以来、18~19年ぶりとなるが、当時と今とで、そのステージにはどんな違いがあるだろうか。3月1日に開催された富山SOUL POWER公演の様子をここで伝えたい。
「ごく普通のアンちゃん」の歌が始まると…
3月1日のライブ当日の夕方。雨が降ったりやんだりする中、年齢層がかなりバラバラな客が、ひとりまたひとりと会場である富山SOUL POWERへと入っていった。この日は10代の若い客はもちろん、70代の客もいた。しかも、「子供と一緒に観に来た」というわけではなく、自身が「観たい」として訪れていたという。 多くのロックバンドやシンガーを支持するリスナーには「世代」「このジャンルが好きそうな人」というすみ分けのようなものがあるが、銀杏BOYZにはそれがまったくない。幅広い層の人たちが支持し、そして皆が自由に楽しむことができるのも銀杏BOYZのライブの特徴だ。しかも、今回は峯田ひとりの弾き語りステージ。その「歌」たちを染み渡るように楽しめるはずだと期待感が膨らむ。 こんな空気の中で、ギターを一本鷲掴みにしてステージにネルシャツを着た峯田が現れた。見た目だけを見れば「ごく普通のアンちゃん」という風情だが、これは峯田自身があえてそうしているのだろう。峯田は常々「自分はただの音楽好きの46歳」と語り、ある種の「ステージとリスナーの上下関係」みたいなものをなくすような発言をする。その上で「ライブ」という特別な空間に存在する「音楽があまねく人と人とのつながりや瞬間」だけを追い求めたいとも。 そんな峯田が1曲目に「新訳 銀河鉄道の夜」を歌うと会場の空気は一変。神が憑依したかのような強さを与えオーディエンスは皆、息を飲むようにその音、歌詞、そして峯田の声に聴き入った。 続く「NO FUTURE NO CRY」「若者たち」といったアップテンポな楽曲でも、アコースティックギターを壊れんばかりにかき鳴らし圧倒。まさに「生の銀杏BOYZ」「生の峯田」を前に、オーディエンスがぐんぐん引っ張られていくように感じた。 その神がかった歌と歌との合間に入るMCでは、まるで友達と話をするかのようにこんな話をした。 「一緒に歌いたいという人は大声で歌ってくれて構わないし、踊りたい人は踊ってくれて構わないし、静かに聴きたい人はそうしてくれて構わない。お客さんたちと一緒に作り上げていく空間がライブの楽しみなので。そのためにも気持ちを込めて歌います」