【社説】鳥インフル多発 最多ペース 対策の徹底を
クリスマスケーキや鍋物をはじめ、鶏卵の需要が高まる季節を迎えた。安定供給に支障が出ないよう、養鶏関係者は高病原性鳥インフルエンザの感染防止に全力で取り組んでもらいたい。 全国の養鶏場で鳥インフルの発生が相次ぐ。九州では11月、鹿児島県出水市の養鶏場で今季初めて発生した。鹿児島、福岡、熊本の3県で野鳥の感染も確認されている。九州全域で警戒レベルを高めなければならない。 今季はこれまでで最も早い10月17日に北海道で発生して以来、既に9道県・11事例を数える。殺処分の対象は121万3千羽で、2023年11月~24年4月シーズンの85万6千羽を超えた。 被害が最も大きかった22年10月~23年4月シーズンは26道県・84事例で、1771万羽を殺処分した。採卵鶏の飼養羽数の1割を超えた。 「今季はこれに匹敵するペース」と農林水産省は警戒を強めている。先日は緊急全国会議をオンラインで開き、都道府県の防疫担当者らに一層の対策強化を呼びかけた。 国内での発生は5季連続で常態化しつつある。昨季は発生数が大幅に減り、農場による飼養衛生管理に効果があったとの評価もあった。 今季は飼養衛生管理の水準が比較的高い農場でも発生している。安心はできない。 背景には世界的な感染拡大がある。農水省によると、米国や欧州では夏冬問わず発生しており、環境中のウイルスが増加しているとみられる。 渡り鳥が持ち込んだウイルスがまん延し、全国のどこで発生してもおかしくない状況だ。過去に発生した施設や地域では再発するリスクが高いことに留意し、異常の早期発見に努める必要がある。 感染防止に決め手はない。野鳥や野生動物が農場に侵入するのを防ぎ、従業員らは衛生管理区域に入る際に靴や衣服を交換したり、シャワーを浴びたりして、細心の注意を払うしかないだろう。 農場の大規模化で、一度に100万羽超が殺処分されたこともある。大量の殺処分は鶏卵価格への影響が避けられない。 大規模農場では管理区域を分割することにより、感染時の殺処分対象を制限できる。ソフト、ハード両面の対応を進めてもらいたい。 米国では乳牛への集団感染が発生している。3月に野鳥から乳牛への鳥インフル感染が確認され、15州の600カ所を超える農場に広がった。 農水省によると、野鳥から乳牛に感染するのは極めてまれだ。過度に恐れる必要はないが、日本でも牛に感染する可能性は否定できない。 11月以降、福岡県と熊本県の農場で、牛の伝染病ランピースキン病に感染した乳牛と肉牛が見つかった。国内では初めてだ。 ワクチン接種などの対策とともに、牛舎でも衛生管理を徹底したい。
西日本新聞