国立大学の文系学部見直し 背景に脱「ミニ東大」化
3タイプの「ミッション」に再定義
国立大学といえば、学問体系に裏付けられた学部・学科を基本に、教授会の自治に基づき、全都道府県で世界・全国レベルの基礎・応用研究と教育を展開する「ミニ東大」の役割を果たす、というのが戦後以来の伝統的な姿でした。この間、教育と研究を分離した筑波大学の「新構想大学」のような試みもありましたが、そうした国立大学の在り方は、なかなか変わりませんでした。 一方、規制緩和や財政削減の要請とそれに対する抵抗などの曲折を経て、2004年度から国立大学は法人化。運営の自律性が高められる一方で、6年ごとの中期目標などを通して、運営交付金の抑制や競争的資金の導入などによる国からのコントロールも維持され、独自財源の確保が必ずしもうまくいかない分、経営環境が厳しさを増している側面は否めません。 さらなる運営交付金の削減を求める財務省などからの問題提起もあって、文科省も国立大学の在り方を改めて問い直す必要に迫られました。2012年6月の「大学改革実行プラン」に続き、2013年11月には「国立大学改革実行プラン」を発表。各大学の選択により、(1)世界最高の教育研究の展開拠点、(2)全国的な教育研究拠点、(3)地域活性化の中核的拠点――の3タイプに分けて機能を強化する方針を打ち出し、各大学に「ミッション(社会的役割)の再定義」を求めていました。改革は今回の通知からではなく、既に2年前から求められていたものだったのです。 第3期中期目標期間(2016年度から6年間)では、この3タイプに応じて予算配分でも重点支援が行われるため、各大学とも必死で取り組まざるを得ない、というわけです。
脱「ミニ東大」が現実のものに
ミッションの再定義を受けて、千葉大学の「国際教養学部 」、福井大学の「国際地域学部」、愛媛大学の「社会共創学部」(いずれも仮称)など、16年度からの開設方針が続々と公表されています。文科省への計画提出期限は6月末なので、学部・学科等を改組する国立大学は相当数に上るものとみられます。 とりわけ人文社会系に対しては、中教審でも、依然として旧態依然の学問体系を基本にしたカリキュラムや「単位積み上げ方式」のままで、学生の自主的な勉強時間も少なく、その多くが企業などに就職しているのに社会人として必要な能力を意図的に身に付けさせようとしていない――などという批判が委員から強まっていました。ミッションの再定義で人文社会系がターゲットになったのも、そうした高等教育関係者の問題意識を反映した側面があります。