国際体操連盟TOPに日本人。どんな追い風が?
現在のFIG会長は、5期20年務めた現職のブルーノ・グランディ会長(イタリア)である。グランディ会長の20年は10点満点制の廃止など技を進化させることに力点が置かれた20年だったとも言える。だが、リオ五輪後にグランディ会長自らアメリカチームの演技を指して、「タンブリング(ゆかでの跳躍)は素晴らしいがあれで芸術と言えるだろうか」と苦言を呈するコメントを発した。これは、芸術的な体操、つまり美しい体操に再び舵を切るべき時期が来たというメッセージとも受け取れる。 そのグランディ後の体操界を誰に託すのかとなったときに、日本が支持されたことは自然の流れでもあり、実に名誉なことであったとも言える。 今回のFIGの選挙では技術委員も改選された。男子6種目で言えば2種目の委員が新顔である。細かな採点方針が協議されていくなかで、美しさを重視する傾向は強まるかも知れない。 新会長が日本人であれば、なおさらである。その意味で、渡辺新会長の誕生は「日本に有利」と言えるかもしれない。 さて、渡辺氏はイオングループ出身の辣腕リーダーと伝えられる。 「目標を決めて、粛々と事を運んでいくタイプで、信頼は厚い」(関係者)と日本体操協会内での評判は上々だ。 実際、渡辺氏は地道な改革にすでに着手してきた。 それまで国内大会では組まれることの少なかったポディウム(器具を設置するための土台)が、今では多くの国内大会で組まれるようになった。オリンピック本番さながらの感触で選手たちはあらゆる試合を戦うようになったわけである。それでリオの金メダルが生まれたと考えるのはあまりに短絡的だが、アスリート・ファーストの予算配分が選手の背を押していることは間違いがない。 渡辺氏が世界の体操界をどうリードしていくのか。 日本に有利であろうとなかろうと、王道を歩んで欲しいと思う。 オリンピックの覇者である体操ニッポンの名に恥じない、堂々たるリーダーシップを期待したい。 (文責・浅沢英/フリーライター)