六回、2点本塁打を放つドジャース・大谷翔平＝ローンデポ・パーク（撮影・水島啓輔)

マーリンズ4－20ドジャース（19日、マイアミ）3年ほど前、べーブ・ルースの孫にあたるトム・スティーブンスさんからこんな話を聞いた。「祖父が本塁打を打つと球場の外にいても『ああ、ルースがホームランを放ったんだな』と分かったそうだ。打球音が他の誰よりもすさまじかったから」。 この日の大谷の3本も打った瞬間に全て本塁打だと分かった。他の選手とは打球音がまるで異なる。この日の飛距離と打球速度は、それぞれのトップ5のうち、4球を大谷が占めた。 もちろん、試合では勝利が最優先される。しかし、野球において記録やデータは、他のスポーツ以上に関わりが深い。大谷がここまで多くのファンに支持されているのは、記録やデータでも数々の常識を覆してきたからだろう。 大谷本人は歴史を作る醍醐味をどう感じているのだろう。そう問うと「今までの記録は（投打二刀流を）やっている人が少ない中での記録が多かった」と話した。確かにその通りではあるものの、投打での規定到達など誰もスタートラインにすら立てないのだから、その時点で規格外だ。 「（50－50は）比較対象が多い中での新しい記録。その意味では自分の中でも違いはある」と価値を見いだしてはいたが、比較対象が多いどころの話ではない。現在、過去の全野手が対象なのである。すごさに気づいているのかと疑いたくなるが、そこが決してゴールではないからこそ、ひょいとハードルを越えてしまうのだろう。いずれにしても大谷が、全野手の頂点に立った。投手としてリハビリ中の選手が、である。（米大リーグ担当：丹羽政善通信員）