任天堂はこの機を狙った? 訴訟でも「パルワールド」はTGS大出展…「和解はないのでは」と専門家
「ある程度泳がせて」訴えた?
「ある程度泳がせてビジネスをさせ、大きい金額を取れるようになったら損害賠償を起こすというのはひとつの手です。話題になる東京ゲームショウ直前のタイミングを狙ったということもあるのではないか」 こう話すのは、知的財産権に詳しい金井重彦弁護士だ。実際、ゲームショウのDiscordブースでは、ポケットペア関係者を招いてのトークセッションが予定されていたが、訴訟を受けてか、その後、登壇者は変更となっている。また9月25日にはPS5版「パルワールド」が全世界68の国と地域で発売されたものの、日本での発売は「現時点で発売時期は未定」と発表されている。 任天堂とポケモンの訴えた内容を見ると、1月のポケモンの発表で触れられていた「知的財産権の侵害行為」ではなく複数の特許権の侵害での訴えとなっている。一体これはなぜなのか。 「似ている、似ていないは難しい論争です。後発であるポケットペア側が『ポケモンは参考にしていない』と主張するのは難しいですが、ポケットペアとしても、任天堂の著作権を侵害しないようあらかじめ想定したデザインなのでしょう。著作権で勝負できないと判断して、任天堂は特許で訴えたのだと見ます。任天堂は知財権の戦略では、日本で一番進んでいるといっていい会社。普通の会社ならば著作権だけで済ますような際も、意匠権や特許権も取得して、自社のコンテンツを守ろうとする、“クセ玉を打ってくる”会社です」(金井弁護士)
反感を買った声明
裁判ともなると長い年月がかかるイメージを持つ人も少なくないが、金井弁護士はこの裁判は決着までそう長くないと予想する。 「特許権の裁判だと、担当するのは裁判所の知的財産権部になります。知財部はわりと空いていますし、専門部だから判断が速い。ですので、6カ月から1年くらいで決着はつくと思います。その間に、任天堂が販売差し止めを求め、仮処分が出れば、ポケットペアは『パルワールド』を販売できなくなりますが、今回、任天堂はそうした動きはないようですね。パテント料(対価として支払うライセンス料)を払うことにして和解というのも考えられますが、任天堂がブラフで訴訟を起こすとも考えにくい。和解はないんじゃないでしょうか」金井弁護士) ポケットペアは提訴を受け、19日に声明を発表している。その中で「当社は東京を拠点とする小規模なインディーゲーム開発会社です」「ファンの皆様のため、そしてインディーゲーム開発者が自由な発想を妨げられ萎縮することがないよう、最善を尽くしてまいります」と暗に自らを弱い立場のメーカーであるとしたことがSNSで「インディーゲーム業界を代表するな」「余計な一文」など反発を呼んだ。 「パルワールド」は2か月で700億円近くも売り上げた特大タイトルであり、ポケットペアは7月にはソニー・ミュージックエンタテインメント、その傘下であるアニメ会社アニプレックスと「パルワールド」のライセンス事業を行うジョイントベンチャーを設立。PS5での発売などを見ても、ソニーとは蜜月だ。そしてゲームショウでの大きなブースでの出展。任天堂と比較すれば小さくとも、弱いインディーメーカーのイメージとはかけ離れている。