ミュージカル界を無双中の甲斐翔真「自分に本当にやれるのか? という怖さもある」
劇場は特別な空間だから、オシャレして来てほしい
――11月には27歳のお誕生日を迎えられましたが、一年頑張ったということで、ご自身にご褒美プレゼントなど買われましたか? オーケストラコンサートで使ったネクタイを……。伊勢丹で買いました(笑)。 ――改めて、27歳の一年間はどんなものにしていきたいですか? 『キンキーブーツ』の次には『マタ・ハリ』も控えていますし、その前には帝劇のコンサートもあります。舞台というのは結構先々までスケジュールが決まるのですが、そのときの自分がどんな状態かというのは、正直決まった時点ではまったく分からないじゃないですか。だから、30歳を迎えるときにどうなっていたいか、というのは今から考えていきたいと思っています。 30代に差し掛かるというのは、人としてひとつの分岐点だと思うんです。この数年間突っ走ってきて、後ろも振り返らずに来たのですが、そろそろ僕も人生を考えないといけないので……。この先の生き方というのは、自分のことだけじゃなくて、いろんな方々の人生を見たりして学びたい。そういう人間観察の一年にもできたらいいなと思います。 ――30代になると、今までよりも、きっと“先輩”という立ち位置になりますよね。甲斐さんに憧れる方も出てくるのでは? 僕はあまり、そういった縦の関係に昔から興味がないんです。もちろん先輩はすごく尊敬していますが、後輩を育てるというよりは、自由に生きて欲しいかな。僕なんか目指さないで(笑)、もっといい方法があるよ、なんて言っちゃうタイプ。 だから先輩で可愛がってくださる方はすごくカッコイイなって思います。僕はわりと後輩の子たちとも友達みたいになったほうがラクなんで。 ――甲斐さんご自身が“自由”を満喫されるタイプというのは、これまでの取材からも感じています。突然旅行に行かれたりするのが好きと仰っていましたが、最近はどちらかへ行かれましたか? イギリスに行きました。ウェスト・エンドも行きましたが、ロンドンの街並みや人々をたくさん見てきました。とにかく人間観察が大好きなんで(笑)。日本では絶対に味わえない体験というのは、行った土地で街並みや生きている人々の様を見ることだと思うんです。それはとても勉強になりますから。 旅行が好きなのは日常では体験できないことを体験できるから。もちろんコストはかかりますが(笑)、それは自己投資というか、役者として役の作り方などにプラスになっているんじゃないかなと思うんです。 お仕事を頑張って、旅行に行ってまた吸収できる。吸収したものをもっとお芝居の役作りに投影したい。その振り幅がどんどん大きくなっていったらいいなと思います。いい相乗効果になっているはずです。 ――役作りは、そういった人間観観察を経て、自分と役との共通項を見つけていく、と。 セリフの一つひとつをちゃんと自分の口からではなく、心から吐き出せる状態に持っていくためには、必ずそこがないといけないと思っているんです。鋭い方々には、“ウソ”が見えてしまうと思いますから。 僕自身も、たとえば電車での会話などを聞いていると、「あ、この人本当はそう思ってないな」って気づいてしまうタイプ。人の気持ちが分かってしまうからこそ、心の底から役のセリフを言えるように、気にして役作りをしています。 ――ぜひ『キンキーブーツ』を今回初めて観られる方、ファンの方にメッセージをお願いいたします。 日本にはいろんなミュージカルがある中で、この『キンキーブーツ』はブロードウェイをそのまま持ってきている作品だと思います。「あれ、ブロードウェイに来たのかな?」と思わずトリップしてしまうようなセットや装飾、雰囲気、そして日本のキャストさえ『キンキーブーツ』の世界観に潜り込んでディープに作品を作っています。 そういう意味での“異国感”を楽しんでほしいです。あと、ローラはすごくオシャレをしているので、ぜひ真似して劇場にいらしてもらえたら! やっぱり観劇するって特別な時間だし、特別であるべきだと思うんです。もちろん『キンキーブーツ』のみならず、ですが、そういうふうに装ってきてくださったら、僕が嬉しい(笑)。 ――では、“キンキー”なハイヒールを履いて、伺います! あはは。そこまで真似しなくても大丈夫ですけど、もし素敵なピンヒールなら、僕は舞台からガン見しちゃうかもです(笑)。 甲斐翔真(かい・しょうま) 東京都出身、1997年11月14日生まれ。2016年に『仮面ライダーエグゼイド』のパラド/仮面ライダーパラドクス役でデビュー。初舞台を踏んだ2020年の『デスノート THE MUSICAL』以降、同年に『RENT』のロジャー役、翌年は『マリー・アントワネット』のフェルセン伯爵役、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のロミオ役(主演)、『イザボー』『next to normal』などに出演、ミュージカル界でスターダムを一気に駆け上がる。2022年~23年にかけてはミュージカル『エリザベート』にてルドルフ役に抜擢。2023年~24年の『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』ではクリスチャン役をWキャストで演じた。25年は『キンキーブーツ』のほか、10月に『マタ・ハリ』に出演予定。
前田美保