十勝最高齢の医師夫婦、いい夫婦の日に「100点満点、一心同体」
夫婦で田中医院(音更町木野大通東15ノ2)を営み46年目を迎えた精神科医・院長の田中章二さん(85)と、内科医・副院長のサイ子さん(86)。十勝の現役医師で最高齢となった2人は、共に大病を乗り越え支え合いながら診療を続けている。今年で結婚61年目、章二さんは「100点満点、一心同体の妻。直感で選んだ相手だが、間違ってなかった」と笑顔を見せる。きょう11月22日は「いい夫婦の日」。 岩手県出身の章二さんと函館市出身のサイ子さんの出会いは、共に学んだ札幌医科大学時代。4年時に同じクラスとなり「温かい人と感じて仲良くなり」(サイ子さん)交際をスタートさせ、大学6年の時に結婚した。 卒業後、サイ子さんは帯広協会病院や音更診療所で勤務。教育熱心なサイ子さんが、住宅と病院を併設すれば廊下伝いに息子たちを見られると考え、開業を計画した。患者の人柄や住みよさから愛着を感じていた音更町で、1979年11月に田中医院を開院した。 音更診療所時代からサイ子さんを慕う患者が多く、開院初日から人気ラーメン店のように行列ができたという。章二さんは午前中は帯広協会病院、午後は田中医院と協力していたが、混雑ぶりに、翌12月に院長に就任。田中医院に専念し、二人三脚での診療がスタートした。 サイ子さんは64歳で乳がん、76歳で肺がんを患い、手術を経験した。それぞれ1カ月ほど入院したが、その間も休診せず、以前務めていた帯広協会病院や他院の協力も受けながら章二さんが1人で医院を支えた。 その章二さんも75歳の時、弁膜症と心不全に。医者から「死ぬ直前のデータ」と言われるほどひどい状態で、即日入院。サイ子さんは不安と心配を感じつつも、「やるしかない」と覚悟を決め、同じように1人で医院を守った。 それぞれが入院している間は1日当たり80人前後を診察し、合間を縫って見舞う毎日。帰りを待ちながら夢中で働き、無事に現場復帰した際にはお互いに「よかった」と安堵(あんど)の声を漏らした。 サイ子さんは当時を「2人でやってきたから乗り切れた」と懐かしそうに語り、「今の元気さで、できるだけ長く医療を続けていたい」と明るい声で話す。章二さんは「85歳と86歳、よくやっていると思う。もう少し頑張ろうかな。まだまだこれからもよろしく」と照れくさそうに伝えた。(菊地正人)