トヨタのWEC成功の立役者、バセロンの異動は突然に。今後は水素燃料エンジンプロトタイプ開発に?
ドイツ・ケルンに拠点を置き、WEC(世界耐久選手権)プログラムやWRC(世界ラリー選手権)用GRヤリスのエンジン開発などを行なうTOYOTA GAZOO Racing ヨーロッパ(TGR-E)。そこで長年テクニカルディレクターを務めてきたパスカル・バセロンが同職を退き、後任にデビッド・フローリーが暫定的に就任することが1月に発表されたが、この決定は突然前倒しされたものだったようだ。 ハイライト|WEC第6戦富士6時間レース決勝 長年WECのチーフエンジニアを務めてきたフローリーは、バセロンについて「異動はいずれにせよ予想されていたことだが、タイミングが少し違っていたかもしれない」と語った。 「パスカルに関しては、トヨタの組織内にとどまり、新たな使命を担うことになる」 バセロンは、2027年のル・マン24時間レースに、水素燃料エンジンを搭載したプロトタイプ車両をグリッドにつけるというプログラムにおいて重要な役割を担うことになるようだ。 バセロンはトヨタがまだF1に参戦していた2006年からテクニカルディレクターを務めてきたが、今回の人事を発表したトヨタの声明では「近いうちに彼が積極的な役割を再開することを期待している」と記されている。 バセロンは、1月にアラゴンで行なわれたWECチームの年最初のテストの前に、今回の人事異動について知らされていた。 TGR-Eが発表した短い声明によると、彼はその後スペインには行かず、「日常業務への関与は一時的に停止」したという。 このタイミングでの異動の理由については明らかにされておらず、フローリーは「トップマネジメントからの指示」とだけ述べている。 ル・マン5勝を含むWECでのトヨタの成功の立役者が、ファンファーレもなく去ったことは、トヨタのモータースポーツ・マネジメントのヒエラルキーの変化を示唆している。 バセロンの異動は「次世代を担うリーダーを育成する」戦略の一環であり、「経営組織を刷新するための第一歩」であるという。 バセロンは2005年にミシュランからトヨタに移籍し、F1プログラムを監督。当初はシャシーの研究開発責任者を務めていたが、2006年にマイク・ガスコインの後任としてテクニカル・ディレクターに昇格した。 そんなバセロンが水素燃料エンジン車両の開発プログラムを率いることになるとすれば、それだけトヨタが本気だと見ることもできるだろう。
Gary Watkins