NEWS 増田貴久・主演ミュージカル『20世紀号に乗って』ゲネプロレポート【辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2024】|CLASSY.
増田がまとうピースフルな空気が舞台をより魅力的に
「僕は君が不滅の女優になる最後のチャンスをあげようとしているんだ」。ハリウッドの映画界で名声を手に入れたリリーは「私は売れっ子あなたはどん底~♪」とかわそうとしますが、「ちやほやされても演技力求められてない~♪」とオスカーに痛いところを突かれます。当時のアメリカでは映画より舞台が本格的で高尚、というイメージがあったのでしょうか。「舞台の君は輝いていた~♪」「ペラペラの街ハリウッド~♪ 君は今腐りかけ~♪」と、言いたい放題のオスカー。でも、エモーショナルで優しくて包み込むような歌声なのでそんなにキツい言葉に聞こえません。歌に乗せれば、シビアな内容でも音の波に乗って相手の心の奥に届く……これこそがミュージカルの真髄です。 「アイディアニュース」の珠城りょうのインタビューでは、「増田さんは、とてもユーモアがあって優しい方なので、オスカーが偉そうで傲慢というだけの人ではなくなっているんですよね」と言われていました。強引で不遜で人格的にも問題があるプロデューサーなのに、増田貴久の醸し出す雰囲気と歌の効果で愛すべきキャラに。さらに、彼の座長としての影響力が波及しているのか、このお芝居に出てくる人、全員人間的でチャーミングで憎めないキャラに見えてきます。生き馬の目を抜くアメリカの芸能界が舞台なのに、どこか牧歌的な人間ドラマが繰り広げられていました。21世紀の芸能界は風紀が乱れ気味ですが、増田貴久がまとうピースフルな空気は、舞台の上でも現実世界でも周囲を浄化してくれそうです。
■辛酸なめ子 イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は『女子校礼賛』(中公新書ラクレ)、『電車のおじさん』(小学館)、『新・人間関係のルール』『大人のマナー術』(光文社新書)など。