「イレギュラーだらけのシャーロック・ホームズ」直木賞候補でトリプル文学賞のミステリ作家が描く新解釈のホームズ、そして浮浪児たちの漫画とは
同じことは二度としたくない
――『ガス灯』には、いわゆる「ベイカー街イレギュラーズ」で主人公のリューイを筆頭に、新解釈のシャーロック・ホームズ、同じくイレギュラーズのジエン、アビーなど魅力的なキャラクターが登場しますが、キャラ作りはどのようにされていますか? 性格や経歴よりも先に、落書きなどしてビジュアルを固める作業をまずします。ビジュアルを固めると、逆にそこからキャラクターの個性や人間性が見えてくるんです。人間は全部外側から作られると思っているので。 ――漫画家を目指していた経験が活きているのでしょうか。 そうですね。たぶん、小説家としてはかなり珍しい作り方じゃないかと。 ――特に、ホームズがインド系というところに驚かされました。 ホームズは、インド系の男で、白いスーツを着ていて、善人とは言い難いやつ、程度のイメージから作り始めました。最終的なデザインに関しては、松原先生のお力も大きいですね。 ――そもそも、なぜホームズをインド系の人物に? 僕の小説、『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズに、サブキャラクターとしてわりと原典に忠実なホームズを登場させていたので、同じことはしたくないなと。 そこで考えたのが、インドがイギリスの植民地だった歴史を踏まえてインド系にすることでした。ホームズは世界中で二次創作されているキャラですが、僕がザッと調べた限りインド系のホームズは見つからなかった。じゃあやってみようかな、と。 当然ですが、原典とは大きく異なった生い立ちを持つキャラクターになっています。3巻の時点では御曹司から召使いに間違えられたり、「国籍は英国だよ」と発言したりしていますね。彼の過去も作中で少しずつ明かしていきたいです。 ――真っ直ぐな性格の主人公・リューイも魅力的です。 ありがとうございます。リューイは「やさぐれた乱太郎」というワードで作り始めたキャラなので、当初は眼鏡をかけていました。 ――『忍たま乱太郎』の! “やさぐれた”というところがポイントですね(笑)。 そうですね(笑)。わりと真面目なタイプではあるんですけど、どこか卑屈さも抱えているという。主人公は真っ直ぐにしてほしいというのは担当さんからのオファーでした。
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