「小児性愛は依存症の一種。誰でもなりうる」…医師が語る加害者治療【こども・若者の性被害をなくそう】
■薬を飲めば再犯は止まるが、あくまで補助的なもの
薬を使った治療は、簡単に言うと、男性ホルモンを抑制し、性欲を下げる薬を飲んでもらうもの。きちんと本人が薬を飲んでいる限り、性欲がなくなるので、再犯は確実に止まります。しかし、一生薬を飲み続けることは、我々のセンターでは想定していなくて。本人のリスクが上がった場合に補助的に使う位置づけです。つまり認知行動療法を受けてもらいながら、どうにも性的欲求をコントロールできそうもないという時に、一時的に薬を使い、収まったら、薬を減らすかやめる。それでまた認知行動療法だけで続けていって、最後は薬のない状態にするのが治療の終わりです。薬を飲むと、本人は3週間から1ヶ月ぐらいたたないと効果を実感しないが、血液検査などで調べると、1週間か2週間ぐらいで、確実に効果が出ているし、実際の行動の変化にも現れていると考えています。
■小児性愛の欲求とは
医学診断名としては「性嗜好障害」のうち、対象が子どもの場合を「小児性愛障害」といい、小児へのわいせつ行為とか強制性交への欲求を持ち、コントロールがきかない状態なので、広い意味での依存症の一種と考えてもらっていいです。なお性嗜好障害の中の分類としては、ほかに「窃視症」(盗撮、のぞき)「窃触症」(強制わいせつなど)などもあります。 ──治療を続ければ改善する? 本人の考え方が変わらないとだめなんです。考え方を変えず、一生薬を飲めばいいとかではなくて、基本的に薬を使いながら、本人の考え方や感情を変えてもらって、自分自身の力でコントロールできるようになってもらうことが必要です。 ──加害者たちは「いけないことだ、まずいな」とは思っているのでしょうか? もちろん理屈としては自分のやっていることが犯罪行為だと理解しています。覚醒剤を使う人と同様、性加害をした人も、女性や子どもに対して、同意のない行為をすることは違法だとわかっているけれども、本人が行動をコントロールできない状態です。