【独自】異例の裁判が進行中!逮捕されたハプニングバー店長が明かす「私が裁判で闘おうと思ったわけ」
約20名の捜査員が店内に
「あの日、店内には8人ぐらいのお客さんがいました。17時半頃、最初2人ぐらいの捜査員が入ってきて、『動かないで』と叫んだと思ったら、その後ろからどんどん計20人ぐらいが店の中に入ってきたんです。 【画像】裸の男女が…摘発された錦糸町のハプニングバー「内部写真」入手 見ていただけのお客さんは30分くらい話を聞かれて帰されていましたが、私と逮捕された男女のお客さんは警察署に連れて行かれました。19時過ぎに店から出たところ、マスコミのカメラが既に待ち構えていました。フラッシュもすごいし、人の多さに驚いて思わず苦笑してしまったら、ニュース映像が流れた際にネット上で『ニヤニヤしている』と突っ込まれました」 そう語るのは伊佐山達也氏。東京・錦糸町で『ノクターン』というハプニングバーを経営していたが、10月2日に公然わいせつ幇助の疑いで逮捕された。店内の「フロア」部分で30代の男性と40代の女性が裸になり、手淫行為をしていたところに警察が踏み込み、この男女とともに伊佐山氏も現行犯逮捕されたのだ。 伊佐山氏は10月23日に起訴され、12月2日に東京地裁で初公判が開かれた。ここで伊佐山氏は起訴事実を「否認」するという異例の行動に出た。いったい彼はなぜこのようなことをしたのか。伊佐山氏に話を聞いた(以下「 」内はすべて伊佐山氏の発言)。 「もともと大学を出て正社員で医療系の仕事をしていました。直近は製薬メーカーで働いていたのですが、正直に言えば飽きてしまって。もともと接客業をしたかったんです。それで女性用風俗のセラピストをやったりしまして、ある意味で接客業ですし、向いているなと思っていました。ただ自分に大きな成長があるわけではないですし、悩んでいたなかで、自分ができる中で楽しそうなのがハプバーだったんです。元々個人的に遊びに行ったりはしていましたし。’23年11月ごろに思い立って物件を探し始めて、今年3月20日に錦糸町に『ノクターン』をオープンしたんです」 ハプニングバーは、開店してから一定数の客が入るようになるまで時間がかかるといわれる。警戒心を持たれやすい業態であるうえ、フラッと一見の客がやってくることはあまりないからだ。だが、ノクターンは開店当初から多くの客が集まっていたという。 「SNS上で宣伝はけっこうやっていました。裏垢男子、裏垢女子を通じた口コミで話題になったりしていましたね。お客さんが入るまでは2年くらいかかるといわれているんですが、始めたばかりからかなりお客さんが来てくれました。その意味で目立っていたと思います。 会員が2000人ぐらい、摘発されるまでの累計売上は1250万円ほどです。会員は来店した人だけではなく、WEBで登録だけしている人も含まれています。実質の来店客数は、恐らく1500人ほどだと思います。若い人や50代などもいましたが、年齢層でいえば30代が多かったと思います。 料金は通常は7000円ですが、平日は『ヤング割』もあって20代前半は5000円。女性は無料です。掲示板に書き込みして来店してくれた女性にはアマゾンギフト券をプレゼントするキャンペーンもしていました。アマギフの費用だけで月に30万円ぐらいかかっていましたし、それでお店はお酒飲み放題ですから、かなり安めの値段設定だったと思います。 稼ぎたいというより楽しい場を提供したくてやっていたんです。自分もハプバーで遊んできましたし、安いほうがお客さんは来るし、それがまたお客さんを呼び込む。だから安くしていました。よく『儲かってるでしょ』って言われたんですが、そんなことはなかったんですけどね」 ◆友達の家で裸になることと何が違う? 目立っていたことで目をつけられたのか。そうして「ノクターン」は開店から半年あまりで摘発され、伊佐山氏も逮捕されることとなった。 これまでハプニングバーが摘発された場合、オーナーや店長などは略式起訴され、罰金というケースが“相場”だった。ところが、伊佐山氏はなぜか罰金刑ではなく、起訴されて、公開法廷が開かれることになった。なぜこのような異例の事態になったのか。 「(なぜ起訴されたのは)自分でははっきりとはわかりません。検事さんに公然わいせつの『公然性』について自分の疑問をぶつけたことが”反省していない”と捉えられたのか……。見せしめという可能性は考えられると思います。毎年新しいハプバーができているので、”これから取り締まりを厳格にしていく”ということを示すために、ウチの店が見せしめにされたのかなと。最初から納得してはいませんでしたが、略式起訴で終わるなら仕方がないと思っていた。だけど起訴となったから、こっちも納得できないところは裁判の中で争おうと決めました」 主張しているのは、事件当日に伊佐山氏はちょうど店内に入ろうとする警察官の受付をしていたため、逮捕された男女の手淫行為を見ていないといい、そのため「公然わいせつ幇助」の「幇助」は認められない、ということ。それと当日店内に客を装った警察の協力者が入ってきており、裸になるなどして犯行を誘発させるような違法な囮捜査を行ったのではないかということ。そして最も強く主張しているのが、「公然わいせつ」の「公然性」についてだ。 「公然性について争おうと思ったのは、その線引きが非常に曖昧だからです。例えば友達の家で、友達など複数人で飲んでいて、仮にそこで誰かが酔っ払って服を脱いだり、あるいは複数人で性行為に及んだとしても、公然わいせつには当たらないわけです。これは担当の検事さんにも確認しました。それがハプニングバーで行われたら、なぜ『公然わいせつ』になるのでしょうか。 ウチの店はみんなで飲んだり喋ったりする『フロア』部分と、『プレイルーム』はもちろん分けていて、後者はカーテンで間仕切りしていました。その中はフロア側からはまったく見えません。 『ハプニングバーは不特定多数の人が出入りするから』と検事さんからは言われました。しかし、うちの店はWEBで会員登録して、利用規約にも同意してもらう形でした。免許証と保険証を必ず確認していましたし、こちらが判断してお断りするお客さんもいました。店には知らない人が勝手に入れないように、2ヵ所に鍵をかけていました。つまりウチの店の利用規約に合意した、身元を確認した人しか入れていないんです。それなのになぜ『公然わいせつ』になるのか。そこが腑に落ちなかったのです」 ◆「寛容になってほしい」 ハプニングバーや乱交パーティなどの事件が摘発されるたび、「同意がある人間どうしで公然わいせつが成立するのか」「被害者がいない犯罪では」という議論が繰り返されてきた。 そもそも「公然わいせつ」とは刑法に〈公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する〉と2行、記されているだけ。「公然と」という言葉の範囲が曖昧で、「捜査機関による恣意的な捜査を招いている」という批判の声も根強くある。 伊佐山氏が語る。 「勝ち目はゼロではないと思いますが、日本の裁判では起訴されるとほぼ有罪になるのも事実です。勝ち目がほぼなくても、それで勝訴すれば、またお店を堂々と営業できますよね。ここに異を唱えるのは日本に自分しかいないと思います。 怪しければ逮捕するのは警察の仕事なので文句はないですが、面白くメディアにリークして報道させるのはどうかと思います。社会的制裁という意味かもしれないけど、面白いからメディアも取り上げているのかなと思いますし、それも納得いかないんです」 「ノクターン」は12月20日にリニューアルし、店名を変えて再び営業を始めた。伊佐山氏は「今後はダメだったところを修正して、文句のつけようがない形で営業をしていこうと考えています」と言う。 「人に迷惑をかけることはダメだと思いますが、迷惑をかけないでこっそり自己表現している人たちもたくさんいると思うんです。それを突っついて、被害者もいないのに摘発するというのは変だと思う。難しいバランスだと思いますけど、性的マイノリティや性的なものにもう少し寛容になってほしい。センシティブな問題だからこそ、ハプニングバーのような場所にも意義があると思います」 裁判はいまも進行中だ。伊佐山氏の訴えは届くだろうか。
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