弱井先生は“みんなが大好きな中村倫也” 『Shrink』は“心を知る”きっかけとなる一作に
中村倫也が主演を務めるNHK土曜ドラマ『Shrink―精神科医ヨワイ―』が、8月31日よりスタートする。 【写真】多くの視聴者の心を掴んだ『半分、青い。』マアくんの中村倫也 本作は、『グランドジャンプ』にて連載中の同名漫画を実写化したヒューマンドラマ。のんびり屋だけど優秀な精神科開業医・弱井幸之助(中村倫也)と、一言多いけど思いやりに溢れた看護師・雨宮有里(土屋太鳳)が、ひだまりのような笑顔で患者たちを癒やしていく物語。脚本を『猫弁』シリーズを手掛ける小説家であり脚本家の大山淳子、演出を『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)の中江和仁が務める。 筆者は出演者会見の前に行われたマスコミ向けの試写で第1話を一足先に観ているのだが、中村が演じる弱井は、月並みな表現になるが“みんなが大好きな中村倫也”といったぐらいに、中村のパブリックイメージに近い適役という印象だ。弱井は患者の目をじっと見て診察する優秀で心優しい精神科医。医者としては一人ひとりの患者に少し踏み込みすぎなところはあるようだが、それでも見方を変えれば患者に寄り添う気持ちが強いという証拠。ネクタイ柄に選ぶほどにパンが大好きでふんわりとしたマイペースな雰囲気を持っているが、患者の緊急時には冷静かつ真摯に対応する。 共演の土屋太鳳も会見の中で「弱井先生が温かく、そして凛とした眼差しで包み込んでくれたので、視聴者の心を温かくするのではないかなという風に感じました」とコメントしており、さらに中村本人の印象については「現場の空気と作品の空気をふわんと重ねて、溶け込んでいくように役に入っていくような方」と話していることからも、中村本人と弱井が同じ空気感を醸し出していることをイメージさせる。 同じNHKのドラマとしては、朝ドラ『半分、青い。』(2018年度前期)が中村の知名度を上げた作品として知られているが、近年の主演作としては、ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(2022年/TBS系)、映画『宇宙人のあいつ』(2023年)、ドラマ『ハヤブサ消防団』(2023年/テレビ朝日系)に続く主演作となる。意外にも中村が医師の役を演じるのは今回が初めてだが、会見での受け応えや情報番組『午後LIVE ニュースーン』(NHK総合)でのインタビューの様子を見ていても、中村が『Shrink』で演じる弱井幸之助という役には並々ならぬ思いがあるのが分かる。もちろんその思いはどの作品にもあるのは当然なのだが、精神科医を演じる責任といった方が正しいだろうか。 放送の全3回で取り上げられるのは「パニック症」「双極症」「パーソナリティ症」の3つの病気。中村は役作りとして「ぶ厚い本を10冊ぐらい」読み、リアリティを言葉に乗せられるよう、医学知識を学んでいった。精神科医を演じることに、「すごく難しく、すごく繊細で、そしてすごくエネルギーがいる」と中村は話しており、先述したように一見すると中村の自然体の演技に感じられるかもしれないが、その裏には並外れた努力と時間が費やされているのだ。 会見で中村も触れていたことだが、第1話を観て印象的だったのは、主演は中村が演じる弱井ではあるのだが、物語の真ん中にいるのは患者本人であるということ。第1話ではパニック症を患う雪村葵(夏帆)、つまりメインにあるのは病とそれに向き合う患者ということだ。「知ってもらうことが第一の意義」だと中村は先の番組のインタビューで話していたが、全3回で取り上げられる病状は精神疾患の中のほんの一部だ。今回のドラマを通してまずは知ること。原作漫画でさらに深く知ってもいい。同じ悩みを抱える人が気軽に精神科医へと足を運ぶ、きっかけの1ページ目になればと思う。 参照 https://realsound.jp/movie/2024/08/post-1742629.html
渡辺彰浩