「竜巻追跡ツアー」が米国で人気沸騰、映画『ツイスターズ』で、いったいどんなツアー!?
ストームチェイシングの実際
米海洋大気局(NOAA)によると、2023年に米国全体で発生した竜巻はおよそ1400件だった。その大半は、「竜巻街道」と呼ばれる一帯で発生した。もともとこの言葉は、テキサス州やオクラホマ州周辺の異常気象を指すものだったが、正式な境界線が決められているわけではないとステンツ氏は言う。 ジョージ氏の意見では、竜巻街道はテキサス州南岸から始まり、カナダとの国境の向こう側まで続く。ステンツ氏によると、ノースダコタ州とサウスダコタ州の東部が道路網と地形の関係でもっとも竜巻を追いやすい。一方で、一番写真映えするのはネブラスカ州の竜巻だという。 ツアーが行われる月や場所によって、竜巻は違う姿を見せる。春はほかの季節よりも動きが速い。ただし、ジョージ氏によると、ハイプレーンズ(米国中西部のグレートプレーンズ南部の比較的標高が高い地域)の春の竜巻はさほど速く動かない。5月になると、竜巻の発生頻度が落ちはじめる。 「でき方や風の変化のスピードにもよりますが、軽い竜巻はかなり速く動きます」とジョージ氏は言う。「竜巻についていくため、すばやくバンを乗り降りします。季節が進むにつれて、ゆっくり見られる時間が増えます。とくにじっくり観察できるのは、モンタナ州ですね。1時間くらい見ることができます。あまり急がなくても大丈夫ですが、それでも十分強烈です」 通常は、3キロから5キロほど離れたところから竜巻を見るが、よく見るために、2.5キロほどのところまで近づくこともある。落雷は、竜巻が近すぎるという合図だ。必要であれば、あらかじめ決めておいた経路で避難する。
気候変動の影響は?
竜巻を探す場所をどう決めるかは、これまでよりもはるかに複雑になってきている。 『ツイスターズ』は気候変動について触れてはいないが、気象条件が変化していることで、これまでの竜巻の発生場所や発生方法についての知識を改めなければならなくなっている。 ステンツ氏は、「ストームチェイシングが一番活発に行われている地域で、竜巻の数が時間とともにわずかに減っているという証拠があります」と言う。研究により、竜巻発生地帯は、平らで人口の少ないハイプレーンズを離れ、森林地帯が多いミシシッピ渓谷に向かって東に移ってきていることがわかっている。 ただし、これが気候変動の影響なのかどうかは、まだわかっていない。ステンツ氏は、「単なる自然変化かもしれません」と述べており、毎年の竜巻の数が気候変動によって変わっているという考え方にも懐疑的だ。 「私のストームチェイシングが、気候変動によって大きな影響を受けているとは考えにくいです。竜巻の数は年によって大きく異なりますが、長期的に見れば、年ごとの竜巻の傾向に大きな変化があるようには見えません」 気候変動が竜巻に与える影響はまだ不確かなままだが、研究は活発に行われている。バーンズ氏は、どんな影響であろうと、竜巻は減ることになるだろうと考えている。 バーンズ氏が注目しているのは、太平洋でのエルニーニョとラニーニャという気候パターンの入れ替わりだ。これが起こるのが今年の夏で、それによって荒天が増えると予想される。 「今年は例年にない激しさです」とバーンズ氏は言う。とくに激しかったのは、4月のネブラスカ州の竜巻と、5月のアイオワ州の竜巻だ。