旧統一教会トップは謝罪せず「被害」強調、2世あきれ 「解散請求、受け入れていない」岸田首相への不信感も【単独インタビュー前編】
安倍晋三元首相銃撃事件の発生から2年。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長が7月上旬、共同通信の単独インタビューに応じた。単独取材は昨年3月以来で、2回目。なぜこのタイミングで、何を訴えたいのか。原稿を見ず、質問に答え続けた教団トップ。だが謝罪の言葉はなく、繰り返し訴えたのは教団の「被害」だった。「宗教2世」らからはあきれ声や批判が噴出。インタビューの様子を2回に分けて詳報する。(共同通信=深江友樹) 【写真】旧統一教会が「改革」を強調する裏で飛び出した韓鶴子総裁の「日本賠償」発言 内部からも疑問の声 本当に変われるのか?
◇場所は東京・渋谷にある教団本部。青いスーツに身を包んだ田中会長が記者の前にゆっくりと現れた。小脇には質問項目に関連するとみられるメモが書かれた小さな手帳。インタビューは不満の吐露から始まった。 ―安倍元首相の事件から2年となった。 教団が向き合っている環境は激変した。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)からの歪められた主張、メディアによる批判報道で、自民党総裁が教団との関係断絶宣言、挙げ句の果てには朝令暮改の法令解釈変更で、解散命令請求された。信者の人権侵害は全国にまん延した。 解散請求は教団にとっての死刑宣告。信教の自由から見ても、法の支配から見ても、絶対に不当だ。民主主義の根幹と言える思想信条の自由、信教の自由に政府がいとも簡単に介入した。他の宗教団体にも危機意識が広がっている。 ◇解散請求の審理は、東京地裁で非公開で進んでいるが、結論の時期は示されていない。質問権行使を巡っては、回答拒否をしたとして地裁が田中会長に10万円の過料を命じた。教団は不服として即時抗告している。
―解散請求にはどう対応するか。 解散請求は断固受け入れられない。教団の幹部が刑事事件を起こしたわけでもなく、ふに落ちない。教団は2009年のコンプライアンス宣言以降、大きく変わっている。全国弁連側は「教団は解散しても続く」「税制優遇がなくなるだけ」と主張しているようだが、悪意しか感じない。解散となれば、財産は持てず、集会する場所もなく、信仰継続は簡単ではない。最後まで徹底して戦っていく。 ◇昨年11月の記者会見では、田中会長が「おわび」を表明するも、「謝罪」はせず批判を浴びた。 ―おわびはしたが、謝罪はしなかった。 スタンスは変わらない。世間をお騒がせしたわけで、おわびはした。だが、謝罪は補償が伴う。被害者が誰か不明確なままに謝罪することは適切ではない。ましてや今は裁判も闘っており、控えるべきだ。おわびと謝罪には距離があり、それは今も変わっていない。 ―岸田政権についてはどう評価するか。