『マル秘の密子さん』©︎日本テレビ

　『マル秘の密子さん』（日本テレビ系）はファッションも見どころの一つだ。特に目を引くのはfoufouやTSUMORI CHISATO、RE SYU RYUといったファッションブランドが衣装協力する密子（福原遥）のコーディネート。どれも一点モノのような緻密で優美なデザインはトータルコーディネーターである密子のキャラクターを印象付けると同時に、この物語をどこか童話のような世界観に構築する。夏（松雪泰子）をはじめ、密子の魔法がかかった登場人物のビフォーアフターも見逃せない。 【写真】パーティ会場に現れる彩（吉柳咲良）と夏（松雪泰子） 　第4話で、密子にコーディネートを依頼したのは、まさかの敵である遥人（上杉柊平）。玲香（志田彩良）主催のパーティーで取引先の令嬢とお見合いをすることになったが、その気がないため、相手から縁談を断られるようなコーディネートを密子に頼みたいというのだ。 　だが、遥人を演じる上杉柊平はもともとファッションモデルで、スタイル抜群。そのため、いつものスタイリッシュなスーツでなくとも難なく着こなしてしまう。遥人が衣装鏡を見ながら放った「まいったな、何を着ても似合ってしまう」は、なかなかのパワーワードだ。その後ろで微笑を浮かべながら優雅に拍手する密子の姿にも思わず笑ってしまった。 　密子と遥人の相性がいいのか、悪いのか分からないやりとりも印象深い。遥人がどんなに高圧的な態度で迫っても、密子は一切顔色を変えず、するりと交わす。なおかつ煽り上手で、密子の方が遥人より一枚上手だ。そんな密子に、自分の下で働かないかと誘う遥人。パーティーでも夏ではなく自分をアテンドするように命じ、密子は誘いに乗る。しかし、それは夏への裏切りではなく、密子にはある目論見があった。 　その一つは、夏の娘・彩（吉柳咲良）を味方につけること。九条開発の広報部で契約社員からの正社員登用を目指す彩にとって、九条家を敵に回すのは大きなリスクだった。また以前からお人好しで騙されてばかりの夏みたいになりたくないという思いを持っていた彩は、直属の上司である玲香（志田彩良）の味方につくことを決める。そこで密子は夏を完全に孤立させることで、彩の本音を引き出そうとしたのだ。夢の実現がかかった大事な局面でさえ、自分のことより他者を優先する夏の姿を見て、彩は本当は自分が夏を助けたいと思っていることに気付けた。 　密子のコーディネートで華やかさを抑えたスーツからオレンジの鮮やかなカジュアルスーツに着替えた彩はパーティーで夏を見事にエスコートし、前社長のプロジェクトに興味を持っていた大手IT会社のカリスマ社長・奈良橋（山下容莉枝）との縁を繋げる。 　一方、気になる密子の遥人へのコーディネートは“何もしない”。遥人がお見合いする女性は人付き合いにおいて相手の内面や人間性を重視することがリサーチで分かったと説明する密子。意味が理解できていない遥人に「そのままのあなたで大丈夫です。それでちゃんとフラれますので」と密子が笑顔で言い放つ場面は、やや気の毒にも痛快だった。しかし、結果的に依頼は成功したため、密子はその見返りとして遥人から、ここ1年の全社員の出退勤時間を記録したデータを受け取る。これが、密子が遥人に協力したもう一つの目的だった。 　難攻不落な敵かと思いきや、意外にも密子に振り回されっぱなしで、逆に彼女に興味を持ち始めている節さえある遥人。そしてもう一人、密子に対して特別な感情を抱き始めているように見えるのが夏の息子・智（清水尋也）だ。パーティーで手柄を横取りされた腹いせに玲香が密子に浴びせようとした水を代わりに被った智は、彩に「気が付いたら体が動いた」と語る。そして偶然にも、密子はそんな正義感の溢れる人間を探していた。 　密子が自身の創作として夏に語った、いじめを受けていた女の子はおそらく火事で亡くなった前社長の秘書で、九条家に目をつけられていたという“小原鞠子”なのだろう。その女の子を唯一助けた人間は、レモン味が好きだったという。彩が買ってきたかき氷の中から、智が選んだのはかき氷。密子が探す正義のヒーローは智なのか、それともミスリードを誘う描写に過ぎないのか。三角関係に発展しそうな、密子×智×遥人の関係性も見逃せない。